つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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小山宙哉『宇宙兄弟 23』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

―その選抜試験で古谷さんが得たものは何ですか?

―閉鎖環境ボックスで過ごした2週間の
”仮想宇宙ミッション”の体験と―
そこで出会った仲間です

年の差とかもありましたけど
関係なく―
一生もんの友達です
(『宇宙兄弟 23』)

 

物語の世界は多種多様なのですべての作者にあてはまるわけではありませんが、オーソドックスな物語の世界では、優れたストーリーテラーは、登場人物の肉づけが豊かです。ホラー小説の大家であるスティーブン・キングの長大な作品の前半は、登場人物の生活に関する細々とした描写から始まるのが常です。人物に関する小さなエピソードを積み重ねる中で、読者のうちにその人物に関するイメージが具体的にできあがり、臨場感が高まり、喜怒哀楽への感情移入がしやすくなるのです。

小山宙哉『宇宙兄弟 23』の中でも、二人の女性宇宙飛行士の過去の出来事が様々なアングルから語られます。母親の視点から、伊東せりかの死んだ父親が残したビデオについて。近所の商店街のコロッケ屋の親父が語る幼い日のせりかの言動。北村絵名の弟が語るカモンライダーショーでの姉の思い出…本筋の宇宙への夢の実現とは関わりないように見えながら、どこかでその人物の輝く部分とつながっているようなエピソードによって、物語はより立体的に見えてくる。これがポリフォニーの効果です。

『宇宙兄弟 23』は、それまで停滞していた様々な人の夢が一気に実現する段階に入っているので、泣かせどころ満載です。#217のクレジットもいいニュースといいニュースといいニュースといいニュースとなっているのだから、いいことづくめの出来事が目白押し。

かつて六太とともにJAXAの試験を受けたやっさんこと古谷やすしは、サイズ変更が可能な宇宙服を開発した古谷の恩人、馬場広人の娘馬場奈々美とともにスイングバイ社を受験することになり、同じく訓練をともにした福田直人が試験官に回るというめぐり合わせ。

ジョーカーズのミッションポスターが出来上がった南波六太は、いよいよ宇宙に向けて、一歩足を踏み出すステージに入り、真壁ケンジは、小惑星探査ミッションのメンバーに抜擢。伊東せりかの搭乗するアレス気呂泙気防弾匹澆法

そんな中で、唯一ジョーカーズに垂れこめる暗雲。それは…というのが23巻のあらましです。

伊東せりかの腕時計が故障し、宇宙に持ってゆく審査済みの時計を六太が与えるというのが、数少ないラブコメ的要素なのですが、はたしてせりかの中で六太がどのような存在になっているのかは、うかがい知ることができません。

ところで、タイトルは『宇宙兄弟』なのに、今回一度も登場しない、南波日々人はその後どうしなったのでしょう?かつて六太のはるか前方を進んでいた日々人が後退し、今や六太が抜き返した段階。抜きつ抜かれつが『宇宙兄弟』のデフォルトであるとすれば、日々人の再登場に至るまで、まだ色々な紆余曲折がありそうです。

PS 作中登場する横浜のアーケード商店街、よっこい商店街は、横浜橋商店街がモデルになっているのでしょうね。今日では貴重な存在となった下町情緒あふれる元気な商店街なので、近くの人は是非行かれることをお勧めします。

  Kindle版


関連ページ
小山宙哉『宇宙兄弟 22』
小山宙哉『宇宙兄弟 21』
小山宙哉『宇宙兄弟 心のノート』



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