つぶやきコミューン

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イケダハヤト『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本



プロブロガー、イケダハヤト氏の『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか 年500万円稼ぐプロブロガーの仕事術(光文社新書)は、これまでイケダ氏によって書かれた本の中でベストと言える一冊です。

とにかく熱い情熱が本の最初から最後までたぎっていて、切れ目なく続いています。内容も自前のコンテンツで、これまでの試行錯誤の足跡がそのまま活字になった感じです。このテンションの高さで、読んでいる方も自然に煽られて、何かをやってみようという気にさせられます。とにかく元気が出る一冊なのです。

イケダ氏の仕事術に関しては、これまでも『武器としての書く技術』(中経出版)『年収150万円で僕らは自由に生きていく』(星海社新書)でも紹介されていましたが、この本の最大の特徴は、もっと前の少年時代まで遡って、一種私小説的に、どのようにして、今のように炎上を恐れないマインドセットを確立できるに至ったかが書かれている点です。

イケダハヤトの作り方

かつてのイケダ少年は、ビジュアルにも能力にも自信が持てずに、普通に周囲の空気を読む存在でした。その中でまず自分の売りとなる能力に磨きをかけ、自信を獲得する段階が最初のステップでした。

 特に小学校の頃は、自分の容姿にも、能力にも、体力にも自信を持つことができなかったため、人一倍シャイで、臆病で、人前で何かをすることを常に恐れていました。p17

まず自信の拠り所になるものとして、磨きをかけたのがゲームやインターネットの知識。しかし、それだけでは単なるオタクにすぎないので、勉強にも励むようになったのです。

 ゲームの達人だけではただのオタクどまりですし、勉強ができるだけではただのガリ勉になってしまいます。ぼくは、遊びと勉強の二刀を磨くことで、徐々に「先生」と呼ばれる地位を確立していきました。pp20-21

この「先生キャラ戦略」は功を奏し、男子生徒だけでなく、女子生徒にも、一目も二目も置かれる存在へと変わっていったのです。しかし、それは周囲に合わせ、自分を曲げてしまうことではなかったのか、自分というものがなかったのではないか、こうした状態が大学を卒業するまで二十年間続いたとイケダ氏は述べています。

会社へ入って安泰と思ったのもつかのま、学生時代までの戦略はたちまちにほころび始めてしまいます。怖くて電話が取れない、飲み会にも耐えられない。「社会不適合者」としての自分に気づくことになったのです。

そんな自分の支えとなったのが、中学以来の趣味である「ブログ執筆」でした。マーケッティングに関する文章を書き発表することで、読者の評価も得ることができましたが、他方何を素人がというバッシングにも遭いました。業界からは、インターネット上だけでなく、リアルな飲み会の場でもバッシングが行われたのです。これが「炎上」の始まりでした。

理不尽な思いを抱えたまま、睡眠不足や食欲不振に陥った挙句、腰の引けた文章しか書けなくなってしまいました。2010年のころです。

それではいけないと思い始めたきっかけは、2011年の暮にあるNPO法人の起業家にインタビューしたことでした。

 そこから、空気を読んでしまう自分の性格が嫌になり始めてきました。だったら、いっそのこと積極的に「嫌われ者」になってやろう――。
p34

そう覚悟を決め、2012年の新春早々、「『嫌われ者になるべき5つの理由」を発表し、そのスタンスは今に至るまで続いているわけです。

炎上とは、新しい価値の創造であるという思想が、その根幹にあります。

もちろん、すべての「炎上」が正しいわけではありません。よい炎上悪い炎上があるとイケダ氏は言います。

明らかなミス、無知に基づく炎上は悪い炎上、初めからウケ狙いで炎上させる「炎上マーケッティング」も悪い炎上。よい炎上とは、どうしても伝えたいことを、炎上覚悟で発信する場合、結果として生じる炎上のことです。

炎上を恐れないマインドセットを身につけることによって、リアルな世界でも他との摩擦や軋轢を避けずに、より自由に、自分の信念に基づいた生き方ができるようになる。そして、自分に合わない人は去り、自分にあった人のみが周囲に残り、より気持ち良い人間関係が形成できるようになるのです。

成功するために必要な条件

この本の要となるもう一点は、学生時代から今日に至るまでの様々な経験通じ得てきた、成功の条件を定式化していることです。

第一の法則は人に負けないだけの時間を費やすことです。

第二の法則はそのために情熱を持って取り組むことです。

第三の法則はさらに試行錯誤を繰り返し、効率アップをはかることです。

第一の時間を費やすことによって中学生の時代にすでに月間50万PVを達成したものの、中学時代に吹奏楽部で音楽一家に生まれた友人との実力差に愕然とします。その練習の時間を何の苦もなく楽しんで過ごしている人相手に、我慢し、頑張っている自分は絶対に勝てないと悟ったことが、情熱の重要性に目覚めたきっかけでした。

 仕事が楽しくて、楽しくてしょうがない……。そうやってのめりこんで仕事をしている人たちを前にして、情熱を持てない仕事に取り組んでいるぼくたちが、努力して、歯をくいしばって追いつこうとしても、土台無理な話なんです。p89

同じ樂器では勝てないなら、勝てるニッチな樂器を見つけようとブルーオーシャンを見つけることで、再び情熱を注げるようになったのでした。

次のハードルは、大学受験でした。そこで時間をかけること、情熱の持てそうな教科を選ぶこと、過去問を解き試行錯誤繰り返し、記憶するにも臨場感を持って声を出すなど効率アップのやり方を工夫することで、早稲田大学の政治経済学部に合格することができたのでした。

第四章 偏差値55から半年で早稲田大学に合格った話は、私立文系の学習方法中心ですが、大学受験をめざす高校生にも薦めたい文章です。

それらを踏まえ、ブログで年間500万円を稼ぐに至った経緯が書かれているのですが、そこでイケダ氏が強調しているのは、「運」の重要性です。ここまで、組織に縛られない自由な生き方をできたのは、インターネットの時代に生まれたからであって、他の時代ならこうはゆかなかっただろうと。

同じことを読者が繰り返しても、同じ結果を生むとは限らないとイケダ氏は言います。

 この本で書いたことをみなさんが忠実に実践しても、運が悪ければ、成功することはありません。実践しなくても、運がよければ成功します。残酷ですが、そういうものです。p138

それでも、「運のよさ」を改善することはできる、そして最終的には、運・不運なんて関係ないと言える境地に至ることである、まだまだイケダハヤト節は続き、炎上にめげないメンタルの確立方法を、最後まで説き尽くします。

インターネットで発信する中で、色々な軋轢や葛藤にぶつかり、時にはプチ炎上に苦しんでいる、あるいなネットで発信することによって、人生のブレイクスルーを目指したいとかんがえる人にはお薦めの一冊です。この『なぜ僕は「炎上」を恐れないのか』は、イケダハヤト氏がこれまで書いた中で、もっとも文章の密度やテンションが高く、無駄のない一冊と言えるでしょう。もちろん著者の意見をそのまま実行する必要はありません。イケダ氏の言うように、同じことをやっても同じ成果が得られるとは限らない以上、それぞれに自分の許容限度の範囲内で、実行してゆけばよいのです。自分の人生に責任を負うことができるのは、自分しかいないのですから。

イケダ氏の本を読んで感じるのは、まず論理的であること、そしてそれまでの社会通念にとらわれない自由な発想が一貫していること、そしてその全てが自らの経験に根ざしていること、の三点です。

こうした特質は、今の空気を読むことが支配的である今の日本社会ではなかなか得難いものであると思います。特に第八章 本当の自由とは何なのかのサルトルやハンナ・アーレントに触れた文章は、哲学書を愛読するイケダ氏の新しい側面を垣間見た思いでした。これから様々な知識や情報を吸収し、様々な経験を積み、活動分野を広げてゆくことで、十年後イケダハヤトは恐るべき思想家になる―そんな期待さえ抱かせる一冊でした。

 

関連ページ:
イケダハヤト『武器としての書く技術』

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