松井優征『暗殺教室 8』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
ストーリーの紹介は、いつだってネタバレと言われるおそれがあるので、まず冒頭のダイジェストを使うことにしましょう。
ストーリーの紹介は、いつだってネタバレと言われるおそれがあるので、まず冒頭のダイジェストを使うことにしましょう。
殺せんせー暗殺計画の直後、突如現れた新たな敵…!!危険なウイルスを撒いてE組の半数を危険な状態へと追い込み、その治療薬と殺せんせーの身柄の交換取引を持ちかけてきたが、ここまで卑劣な手段を講じる者が真っ当な取引に応じるとも思えない…。感染したクラスメイトを助けるために、敵の根城に潜入し、24時間以内に治療薬を奪取するべし!!
旅先の南の島のホテルを舞台にした『暗殺教室 8』は、いわばアウェイでの戦いです。それまでの学校でのホームとの戦いとは違い、相手は大人たち、プロの殺し屋の集団です。何が飛び出すかわからない生命のやりとりを強いられる生徒たちは、日ごろの鍛錬の成果が試されます。
非力な中学生と敵も先生たちも見くびっていたら、険しく切り立つ崖もすいすいと駆け上がり、海千山千のプロの殺し屋相手に互角の戦いを見せます。
途中で、頼りとなる烏間先生も戦力を失い、まんまるな安全形態で手も足も出ない殺せんせーの言葉だけを頼りに、次々に現れる刺客と対峙するE組の生徒たち…
ハラハラドキドキするようなシーンの連続で、思わず胸が熱くなりました。
少なくともこの時代のこの国では、暗殺という名目は全く教育的なものではありませんが、一歩間違えれば命を失うかもしれないという極限的な条件下で、日ごろの教えを忠実に実行し、鍛錬の成果を発揮する姿は、理想の教育の片鱗を伝えている気がします。ところどころの決め台詞も痺れるものが多いです。
たとえば、殺せんせーが、怪力の持ち主である殺し屋と対峙したカルマ君こと赤羽業に向けた言葉。
敗者だって自分と同じ
色々考えて生きている人間なんだと
それに気付いた者は必然的に…
勝負の場で相手の事を
見くびらないようになる
自分と同じように敵も
考えていないか 頑張っていないか
敵の能力や事情をちゃんと見るようになる
敵に対し敬意を持って警戒できる人
戦場ではそういう人を…「隙が無い」と言うのです
銃口を様々な料理につけ味わうマニアックな殺し屋、ガストロさんと対峙した生徒たちへの言葉。
どんな人間にも
壁を破って大きく成長できるチャンスが何度かあります
しかし1人ではそのチャンスを活かし切れない
集中力を引き出すような強敵や
経験を分かつ仲間達に恵まれないと
だから私は用意できる教師でありたい
生徒の成長を見逃さず
高い壁を 良い仲間を
すぐに揃えてあげたいのです
途中では、ビッチ先生(イリーナ・イェラビッチ)のピアノの演奏シーンや潮田渚君の女装シーンもあり、ホテルへの潜入手段のバラエティが話に花を添えます。みな適材適所で、それぞれにできることで力を発揮するのです。
そんな風に試練をかいくぐり、ホテルの上層部へと近づいていく設定は、まさにRPGのゲーム空間そのもの。そして、最上階に待ち構えていた意外なラスボスの正体とは?
松井優征『暗殺教室 8』は、スリリングなシーンが最後までエンドレスに続く神巻です。思わず感動して、涙が出そうになったのは、この漫画を読みだして以来初めてですね。
関連ページ:
松井優征『暗殺教室 6』
松井優征『暗殺教室 5』