つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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荒川弘『百姓貴族 3』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略



荒川弘『百姓貴族』(新書館)は、北海道の牧場が実家である漫画家、荒川弘の実体験に基づくエピソードの数々を題材にしたコミックエッセイです。すでに2巻までの累計が百万部を突破。北海道の農業高校の青春を描いた『銀の匙』と並んで、ただ今ヒット街道をまっしぐら。

北海道の牧場では、スケールの大きさもけたはずれで、都会や郊外の常識は通用しないことばかり。描かれるのは、主として労働と食生活が中心になります。動物をその場で捌いて料理するのも当たり前なら、搾りたての牛乳や畑でとれたばかりの野菜が食卓に直行するのも当たり前。その味は、市場に出回るものとは比べようがないほど、美味。他方において、労働条件はブラック企業と比べても、過酷そのもの。一人でいろいろなことを切り盛りしなければいけません。

おしん!の巻では、母の仕事として、家事、育児、畑仕事、機械仕事、力仕事、経理、営業、販売、介護・・・とオールマイティにこなしてきたことが紹介されているのですが、
 
何でもできるんじゃないのよ!

何でもやらされるのよ!!

と母親の怒りの声が響きわたります。

さらに百姓、漫画家を目指す!の巻では、そんな多忙な酪農家で生まれ育った作者が、いかにして漫画の原稿を描きあげ、スターダムにのし上がったかが、多くのエピソードとともに描かれています。

一難去ってまた一難、多忙な家事に加え、辺鄙な場所柄、思わぬハプニングなど数々の障害を乗り越えて、賞を得るまでの綱渡り的なプロセス。

さらに、百姓、漫画家になる!の巻では、さっさと賞金を使い切り、バイトに明け暮れる毎日。

それでも、無数に仕事があふれている都会は、天国というタフネスぶりこそが、作者の成功の秘密のようです。
 
―あー、漫画を描くヒマの捻出方法ね、カンタン、カンタン !
―!
寝なきゃいいじゃん!!

その他、数々のエピソードがてんこ盛りの『百姓貴族 3』ですが、いろいろと勉強になる話も多いですね。

たとえば、あの有名なサイロですが、実は「サイレージ」という乳酸発酵飼料をつくる施設。でも、絵になるタワーサイロは様々な危険があるため、今では平積みの「バンカーサイロ」やら牧草を丸めただけの「ロールサイレージ」に変わりつつあるという話。あるいは、かわいいキタキツネも農作物の被害もあるし、エキノコックスという寄生虫を媒介するので、駆除される話とか。
 
あと北海道では川や沢の水をそのまま飲まないでね
キツネの糞尿が混じっていたらそこから感染しちゃうんで

ちなみにエキノコックスに感染すると、肝臓に寄生、死に至る場合もあるそうです。北海道を旅行したことのある人は、思わずドキッとするおそろしい話ですね。でも、常識はずれのシリアスな話も、作者荒川弘の魔法によって、すべて笑いあふれたネタに変わってしまいます。

さて、後半を飾るのは、編集者が持ちだした徴兵制ならる徴農制、若者こそ人間形成のために農業で働かせるべきだという議論が出てくるわけですが、その行方やいかに。

とにかく、目から鱗が落ちまくりの『百姓貴族 3』は、とても楽しくて、勉強になる本です。都会のこせこせした発想やら生活からいったんエスケープして、一見ロハス、スケールもでかくてよさげだけど、実際やってみたらとても耐えられないかもしれない想定外の牧場の生活環境の中に、脳だけトリップさせて、心を解放してみてはいかがでしょうか。



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