つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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原田曜平『ヤンキー経済』
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人は一定期間古い時代の固定観念で、世の中を見る傾向があります。自分たちの時代の考え方が今でも有効であるように感じて、今の若者を語ったり、ヤンキーを語ったりするのです。そして、そんな固定観念に基づいて、ビジネスモデルを脳内で作り上げ、外し続けてはなぜだろうと首をかしげるのです。

矢沢永吉の『成り上がり』に代表されるかつての都会志向、上昇志向で、社会に対して反逆的な性格を持っていたヤンキーとは異なる層が地方で、そして郊外で形成されつつある―そんな社会の盲点を見事に描き出したのが、博報堂で若者研究の中心となっている原田曜平氏の『ヤンキー経済  消費の主役・新保守層の正体(幻冬舎新書)です。

マイルドヤンキーとは何か?

この新しい層のことを原田氏はマイルドヤンキーと呼んでいます。彼らにあるのは、強い地元志向です。地元と言っても、半径五キロ程度の狭い範囲であり、小学校や中学校の同級生が交友関係の中心となります。都会へ出て名を上げメジャーになりたいという上昇志向もなければ、都心で散財したいとも考えず、最大の楽しみはイオンなどのショッピングモールへ出かけること。

マイルドヤンキーは、かつてのヤンキーのように社会にたてついたりすることを嫌い、物腰も丁寧で、いい人が多いようです。そこそこの給料で、今の快適な状態を維持できればよいという現状維持路線が彼らのモットーなのです。
 
  そんな36歳になっても消えることのないヤンキー魂を持つK君は、20歳前後の今のヤンキーたちと地元で付き合っているのですが、「最近の若者はよくわからん」と首をかしげています。
 
  K君がかつて行った抗争について彼らに話しても、まったく憧れられないばかりか、「た、大変ですね」とドン引きされ、「若いうちは暴走しろ」といくら説いても、「ルールは破りたくないっす」「人には迷惑かけたくないっす」「警察に捕まるのは嫌っす」と、やりたくないの一点張り。
p15

マイルドヤンキーは、電車での移動を嫌います。彼らにとっての最大の足は、車なのですが、それも高級車やスポーツカーではありません。多くの友人たちと移動時間を楽しむことのできるスペースを持ったミニバンこそがお気に入りの車なのです。

マイルドヤンキーはそれほどITに詳しいわけではありません。ツイッターやFacebook、LINEを楽しむものの、それは既知の友人関係を楽しむものであって、未知の世界へと足を踏み入れるための手がかりとするものではないのです。

マイルドヤンキーは、他の層に比べ、お酒や煙草、そしてパチンコを中心としたギャンブルとの親和性が高い層でもあります。アニメ鑑賞が趣味ではあっても、オタクとは違うのは、パチンコやパチスロで初めて『新世紀エヴァンゲリオン』や『交響詩篇エウレカセブン』を知ったことがきっかけであったりします。このように、お金を使わない若者像一般とは異なり、地元中心ではあっても消費への意欲の高いのがマイルドヤンキーなのです。

優良な消費者層であるにも関わらず、マイルドヤンキーと呼ばれるにこれまで光が当たりにくかったのは理由があります。彼らはほんの数キロ、電車で十数分程度の遠出でさえも嫌うので、わざわざ都心へ出かけての調査協力は、たとえ多額の謝礼が払われようと辞退する傾向があり、それゆえ調査の対象から外れてきたのです。
 
  そこで若者研に頼み、地元族の友達に会社のある東京の赤坂まで来てくれるよう交渉してもらったのですが、全員がNG。理由を聞くと、「地元を出たくない」「赤坂が怖い」「電車に乗るのが嫌」だから。普段から地元を離れないで生活を送る地元族からすると、電車に乗って違う土地に行くのも億劫だし怖いし、東京の赤坂なんて何をされるかわからない知らない場所だし、とにかく謝礼をいくらもらっても嫌だ、とのことでした。p153

『ヤンキー経済』の第二章では、ヤンキーがどのように変遷してきたか、そして第三章ではヤンキー135人に徹底調査の結果が語られ、第四章ではこれからの消費の主体に何を売るのかとビジネスモデルの提案を行います。

 目の前を通り過ぎながら、今まで層として抽出されなかった新しい消費の主人公、ある意味低成長時代に適応した新しいタイプの若者層に気づかない限り、いたずらに上昇志向を煽ったところで空振りの連続。そうならないためにも、世代やマーケットに関する時代の変化を一早くアップデートするためにも、『ヤンキー経済』は必読の一冊と言えるでしょう。

もちろん、ここで「マイルドヤンキー」と呼ばれる層に自分が該当し、その呼び名に違和感を感じる人もいるのではないかと思います。その名がふさわしいかどうかは、しだいに話題になる中で変化していくのかもしれませんが、少数派であると思っていたら結構全国に仲間がいるんだというのは、力強い発見かもしれません。
書評 | 23:01 | comments(0) | - | - |
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