つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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松田奈緒子『重版出来! 2』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略
漫画家に自由に描かせてどうする!
描きたいシーンしか描かないぞ。

描きたくないような地味なコマを重ねて重ねて、
やっと辿り着くのが「物語」だよ。

描く側の苦しみは
読者の喜びと正比例するんだ。
その作品を最も高いクオリティに引き上げるのが、

俺たち編集者の仕事なんだ。

(『重版出来!』p22)



出版業界を編集者の視点から描いた、松田奈緒子『重版出来! 』。第二巻では、晴れて出版社に入り、漫画雑誌『週刊バイブス』の編集者となった黒沢心を中心に、編集部員たちが締め切りに追われる日々を描きます。
 

漫画の扉絵などを飾るアオリの文章に苦労する黒沢は、人気コミック『つの姫さま』を描く高畑一寸の担当だった。元気で、率直で、一直線な黒沢に対し、高畑やスタッフも心を開くが、彼の難点は、ケンカ別れして恋人が出てゆくたびに、鬱状態になり、それが漫画の内容にも反映することだった。編集長の和田から、読者が離れるようなウツ展開を許すなと言われた黒沢だったが…(第7、8刷)

『週刊バイブス』は、ライバル誌の「キュリア」のWeb展開に押され、4位に転落。このままではいけないと、バイブス編集部員全員に、実名でのSNSでの活動が必須とされる。デジタルネイティブの黒沢は、何の抵抗も見せずに、自由にツイッターでつぶやき続ける。しかし、壬生は「SNSなんて読者にコビ売ってるだけじゃねーか」とそのやり方になじめなかった。そんな折、担当の漫画家成田が連載打ち切りとなる。13年目にして初めてのことだった。ショックを受けた成田に対し、壬生はどうフォローしたらいいのか途方に暮れる…(第9刷)

牛露田獏は、かつて『タイムマシンにお願い』で一時代を築いた漫画家だったが、今は作品も絶版となり、忘れ去られていた。そんな旧作にも映画化と電子化の話が持ち上がるが、牛露田は首を縦に振ろうとしない。編集長ともども黒沢も家まで乗り込んだものの、そこにはかつての大家の面影はなく、妻にも死に別れ、中学生の娘アユにもあしざまに言われる、うらぶれた男の姿しかなかった。アユちゃんの笑顔が見たいと、黒沢は説得に乗り出すが…(第10刷)

『重版出来!2』では、漫画家の引き抜きに加え、SNSの活用、コミックの電子書籍化と、新しい時代の波の中で、漫画の編集部が苦労している様が描かれています。それにしても、どの話でも漫画家がスランプに苦しみ、その度編集者が奔走して、そのフォローやカバーに努めている様子が実にリアルですね。それが、作者にとっても日常の姿ということでしょうか。こちら側から見る限り、漫画は見ていて楽しいし、気楽に言いたい放題ですが、一歩現場に足を踏み入れるとそこは戦場、漫画家も、編集者も本当に大変ですね。


 関連ページ:松田奈緒子『重版出来! 1』


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