つぶやきコミューン

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堀江貴文『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本



『ゼロ』は誰のために書かれたか?

堀江貴文氏の新刊『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』(ダイヤモンド社)が話題を呼んでいる。本の発売前に、ネット上で一部が無料で公開され、有料のcakesやメルマガでは全文が紹介されたためだが、特に話題となっているのは、堀江氏の八女での幼少期の時代や父親、母親についてである。

これまで語らなかったことを掘り下げて語る以上、そこには熱い想いが込められているが、堀江氏が本当に伝えたかったのは、ごく単純なことだ。そして、それはすべての人の人生や、仕事、恋愛にあてはまる。ここでは、そのメッセージ一点に絞って紹介したい。

堀江貴文氏の座右の銘ーというわけではないが、よく使う言葉に諸行無常という言葉がある。

物事は絶えず変化し、何一つ同じままでとどまることはない。だから、変化そのものを受け入れて、自分も変わり続けるしかないのだ。

今いる職場もいつしか消える運命にある。今いる職場にいつかいられなくなる日が来る。

それが定年を迎えてならまだいいが、そのずっと手前で来ることも普通にある時代になった。

ライブドア事件で刑事被告人となった堀江貴文氏は、自分が育てた会社を追われ、築いた私財も裁判で持ってゆかれ、懲役刑に処せられて文字通りゼロの存在となった。
 
  たしかに僕は、すべてを失った。
  命がけで育ててきた会社を失い、かけがえのない社員を失い、社会的信用も、資産のほとんども失った。
p20
 
  テレビ局やプロ野球団の買収にまで名乗りを上げた男が、その数年後には独房に閉じ込められ、高齢受刑者の下の世話をしているのだ。誰がどう見ても、これ以上ない凋落ぶりだろう。p21

刑務所に入るのはレアケースかもしれないが、同じような立場は誰の身にも起こりうることだ。今は、恵まれた立場にあり、余裕で人に忠告や助言をしているような人でさえ、一年後には全く逆の立場に置かれることが普通にある時代なのだ。

人間は、なかなか変わることはできない。

本を読んだり、セミナーで講師の話を聞いたりしたくらいでは簡単に変わることはできない。

だが、自ら変わろうとチャレンジするまでもなく、環境が変われば、変わらざるをえない。ピンチは最大のチャンスであるとはこの意味において真実である。変わらなければ生き延びることができないからだ。

自らチャレンジし、変わることができる人はどんどん変わればいいし、環境が変わり、変わらざるをえない人も変わるしかない。堀江貴文氏の『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』はそんな人のための本だ。

まだ大学時代で、アルバイトしながらモラトリアムを楽しんでいるが、社会の変化に対して、漠然とした不安を感じていて、何かしなくてはいけない、だが何をしていいかわからないでいる。『ゼロ』はそんな若者のための本でもある。
 
 ギャンブルに明け暮れ、大学を中退し、手近に稼げる塾講師を続け、気がつけば40歳の門を叩く……。違う!僕はこんな人生を送るために東京に出てきたわけじゃない。いますぐ変わらなくきゃいけない。このままでは、一生「このまま」だ。p104

同じような焦りを青年堀江貴文は感じた。そして、このままではまずいと彼も思ったのだ。それがライブドアの前身、オン・ザ・エッヂの起業につながった。

中学や高校生活を送る中で、何のために勉強しているのか、何のために受験するのか、どんな未来が自分に待ち構えているか分からないで悶々としている十代の若者、『ゼロ』はそんな人のために書かれた本でもある。

堀江氏はこう答えるだろう。

  
 無駄に終わる知識はあるかもしれないが、周囲の大人を説得し、自分で自分の道を切りひらく最強のツールは、勉強なのだ。p78

掛け算の前に足し算、そして努力

頭でわかってはいても、人は簡単に変われない。簡単にチャレンジできない。せっかくのチャンスが目の前に訪れているのに、どうして人は一歩踏み出せないのだろうか。

それは、自信のなさによるものだと堀江氏は言う。自信のなさはどこから来るのか、ひとえに経験の不足から来ると、自らの大学時代を振り返りながら堀江氏は言う。

一人っ子で姉妹がなく、中高一貫の男子校で6年間を過ごし、その間も電車ではなく自転車通学だった堀江氏に女の子と話す機会はなかった。だから、共学の東京大学に進学しても、女の子とどう話していいかわからなかったと、今からは信じがたいエピソードを披露する。
 
 僕は、女の子の前で挙動不審になっていた。キョドりまくっていた。目を合わせることさもできず、声をかけられても逃げるように立ち去っていた。自分が女の子とまともに話せるような日が来るとは、想像もつかなかった。p93
 
 
 たとえばビジネスでも、転職したいとか、社内で新規事業を起こしたいとか、起業をしたい」といった希望を持ちながらも、なかなか行動に移せない人がいる。
 そういう人は、僕が女の子にキョドっていたように、仕事や人生に怖じ気づいているのだ。仕事にキョドり、人生にキョドっているのだ。
 仕事と目を合わせることができず、大きなチャンスからは逃げ回り、人生に向き合うと頭が真っ白になる。けれど同時に、仕事や人生と仲良くなることを強く願っている。どう振る舞えばいいかわからず、あたふたしている。まさに、女の子を前にしてキョドっているオタク少年と同じだ。
 仕事でも人生でも、もちろん異性関係でも、キョドってしまうのは、性格の問題ではない。ましてや、ルックスなど関係ないし、学歴や収入、社会的な地位とも関係ない。これはひとえに「経験」の問題なのである。
p94

誰でもアウェイの世界に足を踏み込むには勇気がいる。最初はオドオドしながら経験の数を増やすしかないのである。
 
 経験とは、経過した時間ではなく、自らが足を踏み出した歩数によってカウントされていくのである。p95

『ゼロ』の一番大きなメッセージも、これと直結している。みんな色々な本を読んだり、セミナーの話を聞いたりして、楽をして結果を出そうとしている。掛け算ばかり覚えようとしているが、ゼロに何をかけようとゼロのままである。
 
 人が新しい一歩を踏み出そうとするとき、次のステップに進もうとするとき、そのスタートラインにおいては、誰もが等しくゼロなのだ。
 つまり、「掛け算の答え」を求めているあなたは、いま、「ゼロ」なのである。
 そしてゼロになにを掛けたところで、ゼロのままだ。物事の出発点は「掛け算」ではなく、必ず「足し算」でなければならない。まずはゼロとしての自分に、小さなイチを足す。小さな地道な一歩を踏み出す。ほんとうの成功とは、そこからはじまるのだ。
pp18-19

このメッセージを実行しない限り、この本の他の内容をしっかり頭に入れたところで無意味であろう。堀江氏の今までの本の中での反省点は、「掛け算によるショートカット」を強調しすぎた点にあると言う。しかし、その前提にある足し算、ひたすら経験を積むことにより自信が持てるようになるプロセスが抜けている人は、いくらショートカットを学んでも成功にたどりつくことはできない。

掛け算する「カッコいいオレ」の以前に、足し算しながら挙動不審の状態から徐々に抜け出てゆく段階抜きには、誰も自らの望む世界で成功できない。

堀江氏が過去の泣いたり、キョドったり、「カッコ悪い」等身大のオレを、この本の中で洗いざらいぶちまけている理由もそこにある。

人は新しい世界では、いつもゼロからのスタートであり、そこから一見しょぼく、地味なイチを足して、足して、足し続けるしかないである。

「足し算」同様、堀江氏がこれまでの著書や言動の中で軽視していたのは、「努力」という言葉の重みである。なぜなら、物事に夢中になって没頭している間、人は努力を努力とは感じず、それを当たり前のことだと感じているからである。しかし、この当たり前のプロセスを抜かして、成功にたどりつけると考えてしまう人もいる。だから『ゼロ』の中では、視点を客観化しながら、説明し直す必要を感じたわけだ。

 
 努力という言葉には、どうしても古くさくて説教じみた匂いがつきまとう。できれば僕だって使いたくない。でも、挑戦と成功の間をつなぐ架け橋は、努力しかない。その作業に没頭し、ハマッていくしかないのである。
 努力の重要性を説くなんて、ホリエモンらしくないだろう。
 地道な足し算の積み重ねなんて、ホリエモンには似合わないだろう。
 けれど、これが真っさらな「堀江貴文」の姿なのだ。
p187

ゼロをイチにする段階でやってはならないことが一つある。それは他人の足を引っ張ることだ。そんなことをしてもゼロは、ゼロのままである。一時の溜飲を下げるために、自分の貴重な時間を犠牲にしてはならない。
 
 他者を羨ましいと思う気持ちがあるのなら、その人の足を引っぱるのではなく、自分で一歩を踏み出そう。他者を引きずり下ろすのではなく、自分が這い上がろう。先行く他者にブレーキをかけるのではなく、自分がアクセルを踏もう。
 成功者をバッシングするのか、それとも称賛するのか。
 これは「嫉妬心」と「向上心」の分かれ道であり、ゼロにイチを足せるかどうかの試金石である。
p227

本との出会いは、チャンスのなせる業である。『ゼロ』の中には、他にも様々なメッセージがあるが、以上のテーマに絞ったのは、私が今同じような人生のターニングポイントに立っているからだ。レビューの形をとっているけれども、実は自分自身に必要だと感じていることを書き出しているのである。

『ゼロ』は、人生の様々な岐路において、役に立つ本だ。自分以外にも、今必要としていると感じる人の顔が何人も浮かぶ。だから、その中の一番大事なメッセージは、こうしてダイジェストのかたちで伝えたいと思うのだ。

最後に、もう一つ気に入った言葉があったので紹介しよう。
 
「あなたの夢はなんですか?」
以前は照れくさくて口にできなかったけど、いまなら言える気がする。
僕は、みんなとつながり、みんなと笑顔を分かち合いたい。
p230


   Kindle版
 


堀江貴文の本レビュー
堀江貴文『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』
『お金はいつも正しい』
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書評 | 20:46 | comments(2) | - | - |
コメント
from: hide   2013/11/01 1:48 PM
うまく言えませんがこの書評を見て、感動してしまいました。俺も頑張ろう
from: mkamiya   2013/11/01 8:51 PM
>hideさん

ありがとうございます。ネタバレになるので、前半の一番おいしい部分は割愛してます。もっと色々な発見があると思うので、是非『ゼロ』読んでみてください。

>うまく言えませんがこの書評を見て、感動してしまいました。俺も頑張ろう
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