つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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堀江貴文『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本
 
こんなホリエモン見たことない!?

獄中で読んだ本をネタに

堀江貴文がかつてない饒舌で

人生を 経済を 科学を語った
 
  
            Kindle版

堀江貴文氏の新刊『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』(角川書店)、とにかく長いタイトルです(41字)。この前の『金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?』も長いタイトルでしたが(30字)、それよりもさらに長いです。気合入りまくりですね。

これまでの堀江氏の書評は、無駄な部分をすべて省いた効率中心の宇宙食みたいなものでした。メルマガ→『刑務所なう。』に所収のものはまさにそうで、単刀直入に本の中身に入り、二行程度でダイジェスト。感想三行、はい一丁上がりみたいな感じ。シンプル・イズ・ベストがポリシーでした。

しかし、この『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』では、あたかもDJのようにまずお題についての前振りから始まります。かつてない饒舌さです。ノリがよく、勢いがあります。そして、同じテーマの別の本へとつなぎながら、お題についてのコメントを展開するわけです。このコメントには、堀江氏の強みと直結したいくつかの定石があるわけです。

堀江氏の得意分野はまず経済。多方面に展開したライブドア時代の業界知識を軸に、大体の業界の仕組みやそれに対応した「官」の法規・規制の実際を理解していること。本によって与えられた知識が島にならずに、一般的な知識と陸つなぎになることが最大の強みです。

次に科学。それほど奥深い知識はなくても、どの分野であろうと基本概念の意味や重要性を理解でき、これを素人でもわかる言葉で説明できること。これが第二の強みです。特に、宇宙やロケットの話になると、目がキラキラと輝く少年のようになります。

そして仕事や趣味を通じた人間関係の中に、本の著者が含まれ、その人物像を語ることで肉付けできること。これが一般の人にはない第三の強みです。本書の中では、家入一眞氏やリリー・フランキー氏がそれにあたります。

さらに、第四の強みとは刑務所での収監の実体験を持っていることです。これは特に3.破天荒でいい―「人生に倍賭けする」生き方の中の「シャバで読んでも面白い獄中本」の中で生かされています。

さて、以上で処理できない部分はどうなるかというと、そこで個人の経験にもとづいた人生観が出てくるわけです。この本の中では、ずいぶんと細やかな喜怒哀楽の感情も、本の内容に誘われて現れるわけで、そこで読者はうるっときたり、童貞ネタとか大笑いしたりするわけです。

しかし、この本の真価は本を題材にしながら、その上で様々な分野の問題について語る部分で、そこに多くの考え、行動するためのヒントがあります。

アイディア
いかに素晴らしいアイディアを思いついても、世界中で同じ事を考えている奴なんていっぱいいて、そのことがインターネットで瞬時に共有される。そうなると、アイディアそのものの価値は、限りなくゼロに等しくなっていく
 この状況で成功できるかどうかは、いかに速く、あるいはタイミングよく実装できるかどうかにかかっていると言えるだろう。
p27

職業

職業はたくさん経験した方が刺激的だし、いろんな視点が身について相乗効果が出るはずだ。むしろ今の時代、いろんなスキルや分野が、何かのイノベーションで突然ツナガルということがよく起こる。その時、自分が過去に経験していた職能が案外役に立ったりするものだ。p52

恋愛本

また、藤沢さんは以前に恋愛本を研究したことがあるそうだ。それによると、巷にある恋愛本というのは、「僕はブサメンでモテなかった」というフリがまず最初に出てくる。そして、「ナンパするようになって何百人の女の人と寝た」とくる。で、「自分がこんなにスゴいから教えてあげる」という論調のものばかりだという。
 はっきり言ってウザい。
 つまり、その著者だけの経験則で書かれているものであって、汎用性が無いものが多いということだ。
p78

一冊の本は三ヶ所いいことを書いてあれば、それで元は取れたようなものとよく言われます。ツイッターで流れてくれば瞬時にRTしてしまうようなおいしい文が、この本には何十とあるのです。

もちろん本についての思わぬ見方の鋭さや巧みな表現に舌を巻くこともあります。たとえばジェームス・D・ワトソン『二重らせん』の項では新発見を追う科学者の業をギャンブラーに喩えています。

 僕はこの本を読みながら、ギャンブルをしている時の恍惚感ばかりを反芻していた。けっして美しいドラマではない。正しいドラマでもないし、常識的でもない。むしろ、非常識で泥臭い勝負師たちのドラマと言える。p92

原作の方が映画よりずっといいといった言葉はよく使われますが、それをどう読んだことのない人に説明できるか。リリー・フランキー『東京タワー』について。

 そんな意味不明なママンキーとの関わりを持っている僕だけれど、刑務所で本作を泣きながら読んで思ったのは、映画よりも100倍ぐらい良いということだ。
 何も映画が悪いと言っているのではない。本を読んでいると、リリーさんの声が聞こえてくるし、あの方言の使い回しが郷愁をさそうのだ。
 リリーさんの周りにはいつも人がいる。その周りにある、優しさのある風景は本当になんとも言えない雰囲気があるのだ。それを受け止めるには本のほうがいいような気がしたのだ。
pp133-134

これはうるっとくる文ですね。こんな文章を書けるホリエが悪いやつであるはずがないと誰もが思うレベル。あるいは、冲方丁『天地明察』について。

この理系オタク3人を出会わせたのは、「算額奉納」という、数学の問題と解答をやりとりする日本独自のシステムだ。
 なんと絵馬に問題を書いて奉納しておけば、誰かがそれを解いて答えを書いてくれるという、「Yahoo!知恵袋」ばりのソーシャルメディアが江戸時代の日本にはすでにあったのだ!これを通して3人が出会っているわけなので、今でいえばネットで出会ったようなものだろう。
p137

このシーンは原作を読んでも、映画を見ても感動的なのですが、その不思議な感慨の正体が昔のソーシャルメディアから由来していると説明をつけるのは、誰にでもできることではないでしょう。

本についての情報を求める、起業や生き方のヒントを求める、表現や発想の妙を楽しむー人それぞれの読み方はあると思いますが、『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』あっという間に読めるけれど、読み返すとその度新しい発見のある本なのです。

付録には書評サイトHONZ代表の成毛眞氏との対談も収められていますが、これがまた面白い。成毛氏は堀江氏の本のチョイスの多様性に舌を巻きます。HONZでもカバーできないニッチで面白そうな本がなぜリストに入っているのかと。もう一つ面白いのは、堀江氏が文字コンテンツを電子書籍にすることへの疑念を抱いてる点、こんなの元から本好きな人しか読まないよねって。その先にどんな風景が予想されるのかは、本を読んでのお楽しみということで。

『ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った』が語る本のリスト

1.「こうなるといいのに」を実現する働き方
【仕事・ビジネス】
・家入一真『新装版 こんな僕でも社長になれた』
・池田邦彦『カレチ』
・池田邦彦『シャーロッキアン!』
・ジュディ・ダットン『理系の子』
・マーカス・ウォールセン『バイオパンク』
・ホーマー・ヒッカム・ジュニア『ロケットボーイズ』
・井田茂、佐藤文衛、田村元秀、須藤靖『宇宙は”地球”であふれている』
2.情報を鵜呑みにする日本人へ【情報】
・中川恵一『放射線医が語る被ばくと発がんの真実』
・藤沢数希『「反原発」の不都合な真実』
・森達也『A3』
・藤沢数希『外資系金融の終わり』
・岡本健太郎『山賊ダイアリー』
・pha『ニートの歩き方』
3.破天荒でいい―「人生に倍賭けする」生き方【生き様】
・ジェームス・D・ワトソン『二重らせん』
・岡崎京子『ヘルタースケルター』
・青木理『トラオ 徳田虎雄 不随の病院汪』
・卯月妙子『人間仮免中』
・山本譲司『獄窓記』
・佐藤智美『ムショ医』
・丸山友岐子『超闘(スーパー)死刑囚伝』
4.この2年で「日本人の生き方」が変わった?【ライフスタイル】
・矢沢永吉『成りあがり How to be BIG』
・乙武洋匡『五体不満足』
・乙武洋匡『オトことば』
・飯島愛『PLATONIC SEX』
・福満しげゆき『僕の小規模な失敗』
・@遼太郎『風俗行ったら人生変わったWWW』
・重松清『とんび』
・東村アキコ『かくかくしかじか』
・リリー・フランキー『東京タワー』
・冲方丁『天地明察』
・村上もとか『JINー仁ー』
5.日本はこの先、一体どうなるの?【過去・現在・未来】
・高任和夫『青雲の梯』
・佐々木倫子『チャンネルはそのまま!』
・細野不二彦『電波の城』
・鈴木浩三『江戸のお金の物語』
・磯田道史『武士の家計簿』
・野火迅、イラスト・小田扉『リーマン侍 江戸語の世渡り』
・藤沢数希『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』
・森高夕次原作、アダチケイジ 漫画『グラゼニ』
・サイモン・シン『フェルマーの最終定理』
・サイモン・シン『暗号解読』
・『カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書』

関連ページ:
『お金はいつも正しい』
『堀江貴文の言葉』
『金持ちになる方法あるけれど、金持ちになって君どうするの?』 PART2
『刑務所なう。シーズン2』



書評 | 19:13 | comments(2) | - | - |
コメント
from: 校正   2013/09/29 2:48 PM
書籍タイトル「・・・そしたら以外に役立った」は「意外」です。
from: mkamiya   2013/10/03 1:01 AM
ありがとうございます!本文の最初だけ「以外」になってましたね。今、直しました。

>書籍タイトル「・・・そしたら以外に役立った」は「意外」です。
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