細田守・杉基イクラ『サマーウォーズ 1〜3』
JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
細田守監督のアニメ作品は、『時をかける少女』(2006)を発売当初DVDで、そして『おおかみこどもの雨と雪』(2012)を劇場で見たのだが、間の『サマーウォーズ』(2009)はまだ見ていない。
無性に見たくなったのだが、どこも劇場ではやっていない。いきなりDVDで買うのも勇気が要るので、とりあえずコミックを買ってみた。1巻にまとめてあるのは短縮しすぎだし、5巻くらいになると面倒くさくなる。3巻というのは、ほどよい長さである(実は全2巻の文庫版もあるのだが…)。
コミックは2010年の発行だから、アニメーション公開後の出版である。
で、結論から言えば、はまりまくりの傑作である。途中で、胸がかっと熱くなった。おそろしくベタな青春物なのだが、おいしい素材が満漢全席状態で盛ってある。そして、最後でそのすべてが見事に完結する。『新世紀エヴァンゲリオン』の割り切れない感じをいささかも残さない徹底ぶり。しかも、キャラクター原案が貞本義行ときている。ブラボー!
杉基イクラの絵は、貞本の原案を尊重しつつも、細田らしさをしっかり出している。『おおかみこどもの雨と雪』を見た後でも、違和感がない。カラー絵も端整で、すんなりと世界にはいってゆける。コミカライズのお手本のような出来だ。
物語は、高校生の小磯健二が、憧れの先輩である篠原夏希に夏休みのアルバイトに誘われることより始まる。
健二のキャラクターは、ビジュアルも内気な性格も、もろに碇シンジ風であるが、数学の才能は天才的なハッカーという点が異なる。
健二は、友人の佐久間(まあ、ケンスケに近いメガネ男子オタクキャラ)とともに、仮想空間のOZのメンテのアルバイトをやっていた。
夏希はエヴァには出てこないような、オーソドックスなロングへアの美少女で、剣道着姿がよく似合う。
夏希のアルバイトとは、実家まで同行し、婚約者のふりをするということであった。しかも、現役の東大生という設定である。
数十人の親戚が一同に介する広大な敷地の旧家、それが陣内家。
そこで、夏希の曾祖母の90歳の誕生日の祝賀会が開かれることになっていたのである。
90歳を迎えるとは思えない気丈なおばあちゃんに、命に替えてもこの子を幸せにする自信はあるかいと聞かれ、ついはいと答える健二だったが…
しかし、夏希の心は、行方不明であったが、ぶらりと戻ってきたおじの侘助にありそうだった(この侘助は、もろにエヴァの加持さんキャラ)。
しかし、そのころ大きな騒ぎがOZでは起こっていた。大規模なシステムエラーが生じたのだが、その犯人として健二は指名手配されていたのである。深夜にメールで送られてきたパスワードの暗号を、うっかり解読し、送信してしまったのがその理由だった。
OZの中に入り込み、真犯人を見つけ出そうとする健二だったが、軽々と蹴散らされる。そこに、OZの世界に君臨する最強のヒーロー、キングカズマが助っ人に現れる。だが、敵は次々にアカウントを吸収して、強大化し捕らえることができず、健二は手錠をかけられ、連行されてゆく。
OZに侵入した敵は、次々にシステム障害を起こし、世界中のGPS、交通網が乱れ、情報が漏洩する。老人の介護システムも異常をきたし、大混乱に。その犯人とは、実はラブマシーンと呼ばれるAIで、詫助が発明し、アメリカ国防総省へと売り渡したものだった。
いったん陣内家へ戻った健介だったが、ラブマシーンはどんどん強大化し、やがて地球に危機が迫る。原発めがけ、衛星を落とそうというのである。果たして、ケンジは地球を救うことができるか。そして、恋の行方は…?
夏休みに好きな女の子との田舎への旅行というラブコメ的要素に、仮想空間の戦いを通じ世界を救うというオタク的要素、そして危機を乗り越える中で、少年は大きく成長してゆくというイニシエーションの物語などおいしい要素がてんこ盛りの『サマーウォーズ』、これはやはりアニメも見るしかないですね。
文庫版(2巻)
DVD ノベライズ
細田守監督のアニメ作品は、『時をかける少女』(2006)を発売当初DVDで、そして『おおかみこどもの雨と雪』(2012)を劇場で見たのだが、間の『サマーウォーズ』(2009)はまだ見ていない。
無性に見たくなったのだが、どこも劇場ではやっていない。いきなりDVDで買うのも勇気が要るので、とりあえずコミックを買ってみた。1巻にまとめてあるのは短縮しすぎだし、5巻くらいになると面倒くさくなる。3巻というのは、ほどよい長さである(実は全2巻の文庫版もあるのだが…)。
コミックは2010年の発行だから、アニメーション公開後の出版である。
で、結論から言えば、はまりまくりの傑作である。途中で、胸がかっと熱くなった。おそろしくベタな青春物なのだが、おいしい素材が満漢全席状態で盛ってある。そして、最後でそのすべてが見事に完結する。『新世紀エヴァンゲリオン』の割り切れない感じをいささかも残さない徹底ぶり。しかも、キャラクター原案が貞本義行ときている。ブラボー!
杉基イクラの絵は、貞本の原案を尊重しつつも、細田らしさをしっかり出している。『おおかみこどもの雨と雪』を見た後でも、違和感がない。カラー絵も端整で、すんなりと世界にはいってゆける。コミカライズのお手本のような出来だ。
物語は、高校生の小磯健二が、憧れの先輩である篠原夏希に夏休みのアルバイトに誘われることより始まる。
健二のキャラクターは、ビジュアルも内気な性格も、もろに碇シンジ風であるが、数学の才能は天才的なハッカーという点が異なる。
健二は、友人の佐久間(まあ、ケンスケに近いメガネ男子オタクキャラ)とともに、仮想空間のOZのメンテのアルバイトをやっていた。
夏希はエヴァには出てこないような、オーソドックスなロングへアの美少女で、剣道着姿がよく似合う。
夏希のアルバイトとは、実家まで同行し、婚約者のふりをするということであった。しかも、現役の東大生という設定である。
数十人の親戚が一同に介する広大な敷地の旧家、それが陣内家。
そこで、夏希の曾祖母の90歳の誕生日の祝賀会が開かれることになっていたのである。
90歳を迎えるとは思えない気丈なおばあちゃんに、命に替えてもこの子を幸せにする自信はあるかいと聞かれ、ついはいと答える健二だったが…
しかし、夏希の心は、行方不明であったが、ぶらりと戻ってきたおじの侘助にありそうだった(この侘助は、もろにエヴァの加持さんキャラ)。
しかし、そのころ大きな騒ぎがOZでは起こっていた。大規模なシステムエラーが生じたのだが、その犯人として健二は指名手配されていたのである。深夜にメールで送られてきたパスワードの暗号を、うっかり解読し、送信してしまったのがその理由だった。
OZの中に入り込み、真犯人を見つけ出そうとする健二だったが、軽々と蹴散らされる。そこに、OZの世界に君臨する最強のヒーロー、キングカズマが助っ人に現れる。だが、敵は次々にアカウントを吸収して、強大化し捕らえることができず、健二は手錠をかけられ、連行されてゆく。
OZに侵入した敵は、次々にシステム障害を起こし、世界中のGPS、交通網が乱れ、情報が漏洩する。老人の介護システムも異常をきたし、大混乱に。その犯人とは、実はラブマシーンと呼ばれるAIで、詫助が発明し、アメリカ国防総省へと売り渡したものだった。
いったん陣内家へ戻った健介だったが、ラブマシーンはどんどん強大化し、やがて地球に危機が迫る。原発めがけ、衛星を落とそうというのである。果たして、ケンジは地球を救うことができるか。そして、恋の行方は…?
夏休みに好きな女の子との田舎への旅行というラブコメ的要素に、仮想空間の戦いを通じ世界を救うというオタク的要素、そして危機を乗り越える中で、少年は大きく成長してゆくというイニシエーションの物語などおいしい要素がてんこ盛りの『サマーウォーズ』、これはやはりアニメも見るしかないですね。
文庫版(2巻)
DVD ノベライズ