つぶやきコミューン

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スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』上、下

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略                                                ver.1.01

 

 

スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』上、下(文藝春秋)は、1977年に出版された小説『シャイニング』の続編の翻訳である(翻訳、白石朗)。小説『シャイニング』の続編であって、1980年公開のスタンリー・キューブリックの映画『シャイニング』の続編ではないと、わざわざキングは「作者のノート」で書いている。

 

オーバールック・ホテルでの惨劇の後、ダニーと母親のウェンディは、どん底の生活を強いられていた。やがて赤貧の中で、母は死に、介護士としての生計を立てることとなったダニーは、夜な夜なオーバールック・ホテルの亡霊にさいなまれ、いつしか父と同じアルコール依存症となる。その結果、職を転々とし、自堕落な生活を送っていた。行きずりの女から、お金をかすめとったことが彼をさらに追い詰める。

 

それでも、ダニーの持つ不思議な能力「かがやき(シャイニング)」は失われることがなく、ある少女からのメッセージが伝えられる。だが、まだそれが何であるかはわからなかった。

 

文無しになったダニーが流れ着いたのは、ニューハンプシャー州のロジャースという町だった。そこで、何とかホスピスでの仕事を得る。彼ほどではないが同じ「かがやき」を持った人びとの導きによるものだった。周囲の人びとの支えによって、ダニーはアルコール依存症から何とか抜け出し、ホスピスで並外れた能力を活かし、やがて「ドクター・スリープ」と呼ばれるようになる。

 

再び、ダニーのもとへと少女からのメッセージが伝えられる。彼女の名はアブラといった。ある行方不明の少年が惨殺されたことを知らせるものであり、その犯人は人の精気を吸って生きながらえる人外の存在なのだという。真結族というその正体を、「かがやき」を使って知った彼女は、逆に彼らに存在を知られ、今や追われる立場となっていた。真結族は、「かがやき」を吸収することで、生きながらえることができるのである。

 

かくして、ダニーの助けを求め、アブラと人外の存在との「かがやき」を使った対決が始まる。

 

見知らぬ男女が、不思議な力によりメッセージを交わし、人々を大きな危機から救い出そうとする。2016年に公開された新開誠の映画『君の名は。』は、明らかに『ドクター・スリープ』よりそのアイデアを得ていることだろう。今や中年の域に達したダニーとローティーンのアブラの場合、ストレートにラブストーリー的な展開に発展するには社会的な抑制がかかるが、「かがやき」という能力で、互いの意識を入れ替えることができる二人の絆は誰よりも強く、アブラが夢中になる場面もないわけではない。

 

真結族の正体を暴き、殲滅しようとするダンとアブラ。アブラの莫大なエネルギーを一族の起死回生の一打にしようとする、女ボスローズ・ザ・ハットをはじめとする真結族のメンバーたち。サバイバルを賭けた戦いは、あのオーバールック・ホテルの跡地で、クライマックスを迎える。

 

『シャイニング』の続編といっても、『ドクタースリープ』は、鳥肌の立つようなホラー小説としての恐ろしさは乏しいが、他方さまざまな超能力を駆使した戦いの物語としては、黒づくめの男たちと追いつ追われつの熾烈なバトルを繰り広げるコナンと灰原哀のように、スリリングで手に汗を握る展開が繰り広げられる。父から子へと受け継がれた因縁とその解決の物語、年の差カップルの禁じられたラブストーリー、やがて死を迎える人々の終活…『ドクタースリープ』は、人外との超能力合戦に、これらの多様な要素を加えたエンタメ小説の傑作なのだ。

 

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