JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略
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奈良東大寺の大仏は高さ25mだが、日本にはそれよりも大きな数多くの巨大仏がある。
牛久大仏 120m
仙台大観音 100m
加賀大観音 73m
会津慈母観音 57m
東京湾観音 56m
高崎白衣観音 41.8m
鳥居観音 33m…
鉄筋コンクリートの工法が導入されて以来、さまざまな時期に、さまざまな場所で、大仏がつくられてきた。日本全国に散在する大仏や、宗教的巨大像をしらみつぶしに集めたのが、大仏ハンターを名のるクロスケの『巨大仏巡礼』(扶桑社)だ。
だが、大きければ何でも大仏と言えるわけではない。大仏の大きさは、立像であれば高さ4.82m、座像であれば高さ2.42m以上と決まっている。これは、一丈六尺というお釈迦さまの身長を基準として、それより大きな仏像を大仏と呼んでいるのである。
ページをめくるたびに、新たな驚きが目の前に広がる。オールカラーで巨大仏の写真が160ページにわたって続くのだ。知識としては、牛久大仏の大きさは知っていても、それを周囲の建物や人物や樹木との対比の中で目にすると、圧倒的な存在感で迫ってくる。それに続く巨大仏の色や姿、周囲の風景もそれぞれに異なるので、飽きることがないのである。
圧倒されるのは、大仏の外側だけではない。巨大な大仏の内部には、巨大な空間があり、そこにも異界が広がっている。
牛久大仏の内部に広がっているのは、最新のテクノロジーによる極彩色の阿弥陀仏の世界の再現である。
仙台大仏の内部は、バットマンテイストの11層にわたる巨大吹き抜け空間である。
東京湾観音の内部は、白亜の教会のようなスペースを抜けると、フェンス一つで海風にさらされるスリリングな回廊が空に向かって続いている。
何百体という金色の仏像が配置された空間もあれば、キッチュな仏像や鮮やかなステンドグラスの空間が広がっている場合もある。
屋外で雨風にさらされているものは、人々の記憶にも残りやすいが、知られざる室内仏もある。
たとえば、駒込の光源寺には高さ6mの金色大観音があり、ほおずき千成り市の日には一般に公開されている。
越前大仏は、大仏殿の間口58m、仏像の高さ28mと、東大寺をしのぐスケールの大きさで、山門の仁王像も、五重の塔も想像を超える高さである。GANTZの世界を超えるスケールの大きさなのだ。
これにはスケールで及ばないものの、東大寺、鎌倉に次ぐ第三の大仏を競い合う、高岡大仏、兵庫大仏、石切大仏。
スケールからすれば勝敗は簡単についてしまうが、その地元の意気込みも微笑ましい。
その他、獅子にまたがる札幌大仏(高さ7.6m、光背10m)、金色色に輝く津市の純金開運寶珠大観世音菩薩(33m)、胸像だけの大船観音(25m)、北の大地に横たわる長さ45mの金色の涅槃大仏、石壁を削って作られた日本寺の大仏(31m)・・・
歳月の経過していないものは、禍々しさを伴うが、いつしか周囲の風景に溶け込んでいるものもある。50年100年も経てば、世界遺産もこの中から出てくるかもしれないと思えるほど、壮観きわまりないラインナップである。
これらの巨大仏を生み出した想像力、それを実現してしまう人々の情熱には、一種の爽快感をおぼえる。まだまだ、この国には、見るべきもの、面白いものが沢山あると信じさせてくれるのだ。