つぶやきコミューン

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羽海野チカ『3月のライオン 13』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本  文中敬称略

 

 

羽海野チカ『3月のライオン 13』は、大半のページが二階堂晴信の活躍にあてられている。

 

羽海野チカ『3月のライオン』の原点となったのは、大崎善生の『聖の青春』と『将棋の子』との出会いであった。その双方で描かれた、若くしてこの世を去った天才棋士村山聖(むらやま さとし)こそ、二階堂のモデルである。つまり、二階堂は『3月のライオン』の影の主人公なのだ。

 

根暗で真面目な秀才タイプの桐山零に比べ、二階堂晴信には花がある。真ん丸な体形にまんまるな童顔。暑苦しいまでの人懐っこさ、破天荒な性格と不敵な自信、重い持病にめげぬ根性。桐山零が陰とすれば、二階堂晴信は陽だ。

 

それゆえに、『3月のライオン 13』のページはかつてない熱気と輝きを帯びている。

 

すごい!!

次に進む道がどんどんひらめく!!

今日のオレは今までで一番のオレだ!!

 

これまで戦績的には桐山零の後塵を拝し続けた二階堂だったが、東洋オープンで、宗谷名人を相手に五分の戦いを見せる。傍で見つめる桐山零も、そして全国の将棋ファンまでが思わず絶叫する白熱の展開、はたして勝敗の行方は?

 

三月町の夏祭りで、三姉妹の長女川本あかりと、島田八段、零の元担任の林田を引き合わせたのも二階堂だった。バランスを崩したあかりをとっさに支えた島田と林田、彼女の心はどちらへと傾くのだろうか。奇しくも畏敬する島田に誘われ、林田は銀座であかりが働く店を訪れるのだった。

 

そして、二階堂ー宗谷戦を目の当たりにした滑川(なめりかわ)七段は、実家の葬儀屋を手伝いながら、自分の将棋になぜ、桐山や二階堂のような輝きが感じられないのかを口惜しく思うのだった。

 

自分ではなく 

他人に憧れてばかりの

見学ツアーみたいな人生

 

ーーーなぜ私は

あんな風に引き裂くように輝けないのか

 

さらに、零の義理の姉幸田香子の現在。初めは零を不倶戴天の敵と憎みながら、いつしか愛おしく思うようになり、喪失感さえ感じる今。

 

そんな風にいくつもの人生の明と暗、光と影が重なり合った『3月のライオン 13』は、過去最高の神巻である。

 

関連ページ:

『3月のライオン 12』
『3月のライオン 11』 
『3月のライオン 9』

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