津田マガキュレーション Vol.91
今晩は、今日は、おはようございます。
津田マガキュレーション Vol.91をお送りします。
Vol.90はどうしたのかと言われそうですが、半分くらい書いたんですね。で、後は下り坂と思って、参照してた他のページを閉じたはずが、書いてたページも閉じてしまいました。途中保存もしてなかったので、要するに記事全部消えちゃったってことです。
その後、仕事がいそがしくなりまして、本も堀江貴文さんとか東浩紀さんとか新刊の書評を色々まとめてたら、Vol.91が出てしまいました。今、Vol.90を書くこともできないわけではないのですが、内容的な充実度はVol.90の方が高くて、時間がかかりそうなんですね。
というわけで、比較的時間がかからなそうで、鮮度の高いVol.91をまず片付け、後は時間が許せばということでいこうと思ってます。始めた以上は、欠番ができるの格好悪いですからね。
0.ふだん本を読まない津田大介が本を読んで書評を書いた!
巻頭言は、津田さんの書評ですね。津田マガには「本を読まない津田に成り代わってブックレビュー」というコーナーがあるわけですが、速水健朗さんの存在理由は?ってツッコミが必ず入るでしょうね。
まあ、津田さんが本を読まないと言っても、忙しくて自分の好きな本を読みたい時に読めないということで、対談とかインタビューとか、話題に広がりと深みを持たせるためには、相手の新刊くらいは読まないと話にならないわけです。そうでないと、相手が筋道立てて本の中で説明していることを一から説明しなくてはいけませんから。
また、後のQ&Aでも出てきますが、津田さんの場合、本の帯に書く推薦文とか求められる場合もあるわけですね。実は、読まなくても、本の内容を聞いてれば推薦文は書けるわけですよ。要するに、ふだん接してる人物評を前面に出して、後関連づけるというやり方ですね。「○○さんは××について隅から隅まで知り尽くした人である。その○○さんが、××について書いた!これは面白くないわけがない!」これ、使えるフォーマットでしょ(笑)。
もちろん、津田さんは真面目な人ですから、そんな手抜きはしないで、走り読みとかして、何とか書くわけです。そのへんの苦労も、この巻頭言の中には含まれていますね。
さて、この巻頭言で津田さんが紹介してるのは、三冊。
一冊は竹田圭吾さんの『コメントする力』(PHP)
このところ津田さんとは接点の多い竹田先生の新刊。これは役に立ちそうで面白そうな本ですね。
二冊目は、芦田宏直さんの『努力する人間になってはいけない─学校と仕事と社会の新人論』(ロゼッタストーン)
芦田さんも、津田マガeXtremeに登場し、面白かったと評価の高く、これを機会にツイッター(@jai_an)をフォローした方も多かったようですね。
そんなこんなで読まないと言っても、立場上読まざるをえない本が毎週何冊か出てくるわけですね。
三冊目は、清水一利さんの『フラガール 3.11 つながる絆』(講談社)
スパリゾートハワイアンズに何度か取材に訪れている津田さんとしては、これも読まないわけにゆかない本ですね。
1. 津田大介が解き明かす「2ちゃんねる」の個人情報漏洩事件の謎
ちょっと改題しています。今週のニュースピックアップは、「2ちゃんねる」のあの事件です。実にタイムリーな企画で、この細かい経緯をすらすらとこのタイミングで言えるのは、津田さんの独壇場ですね。
過去ログ読みたいと思ってても読めない仕掛けが、まずここにあったわけですね。正式名称は「2ちゃんねるビューワー」というこのサービスのメリットは他にも色々あるわけです。
スレッドとか立てられると、煽りやすく、ある程度言論をコントロールできるので、企業や官庁の人間の一部が飛びついたのもうなずけます。今回の事件の特徴もわかりやすく説明していますね。
さらに、深刻な事態を招いた理由として、彼らの思わぬ情弱ぶりも挙げられます。捨てメールアドレス使ってれば、これほどまでに追い込まれることはなかったんですが、油断していたのでしょう。
この後もさらに、津田さんは今回の漏洩事件の流出元「N.T. Technology」社 の問題や、2ちゃんねるの法人化計画が未遂に終わったことなど興味深い問題に触れていますね。
2.フリーターから大学准教授へ!哲学者萱野稔人の”成り上がり人生”
元のタイトルは「言葉の力が日本を救う──萱野稔人が描く“未来のニッポン”」なんですが、k硬い気がしたので面白そうなものにつけかえました。萱野さんは津田塾大の准教授ですね。要するに、津田女に囲まれたうらやましい人生を送っているわけで、そこに至るまでのキャリア形成の方が今の若い人には興味があるのではないでしょうか。
子供のころは、クワガタやサワガニ、ドジョウ採りに夢中になっていた萱野さん。中学時代は、ハンドボール部でスパルタ風なしごきを受けていました。高校時代はバンドの活動に明け暮れ、大学受験で早稲田を受けたのがこの道に進むきっかけでした。大学でタモリも入っていたジャズ研究会に入ってみると、知識のレベルが段違いで、カルチャーショックを受けたわけですね。
気がついたら大学卒業してて、バイトやらなきゃいけなかった。そのころはみんなフリーターやってても、ネガティブなイメージを持ってなかったわけですが、
就職するには、大学院出た方がいいけど、日本はあまり気が進まないので、流行のフランス現代思想をとフランスへ行き、『現代思想』に発表した文章も好評。でも、フランスに残る気はなかった。それは…
一時は闇金の取立て業のバイトも考えた萱野さんですが、翻訳の仕事とかで食いつないでた。その後、どうやって大学へもぐりこんだか、肝心な部分は書いてなかったのが、残念でした。
文学と比べ、哲学のおいしい部を萱野さんはこう言い表しています。
後、言葉の力についてとても大事なことを言っています。
学生時代の経験の差なんて大したことはない。就職試験で、差がつくのは、
就活前の学生さんは、ここしっかりチェックしておきたいですね。そのためにどうすればいいか。
3.世界のデータジャーナリズム最前線《第28回》
──Data Journalism Award 2013: "Data-Driven Apps"部門受賞作
「フランスにおける男女間の給料格差」
4.今週の原発情報クリッピング
とスキップすることにします。
5.小嶋裕一の「原発観測」──「福島第一原発観光地化計画」は実現可能か?放射線量から考察する25年後の「フクシマ」
では、小嶋さんの「結論」が興味深いですね。
興味深いと言うのは、私とは考え方が違うということです。その理由は汚染水の流出が長期にわたって続き、地球環境に影響を与え続けることで、国内的にはいくつか支援の動きはあっても(それに関しては私は賛同しますが)、国際的には福島は支援すべき「悲劇の土地」になりきれず、地球環境の対する脅威の場所であり続けるためというのが、私個人の考えです。この原因は、初動を東電任せにし、しかも世界の協力を仰がず、問題を国内に抱え込みながら実質お手上げ状態となってしまった日本政府のガバナンスのなさ、そして報道面においてその問題点を追求せず、官報に堕したマスメディアの責任によるところ大です。要するに、対処が科学的なベストエフォートではなく、情報操作によってその場しのぎを続けており、この状態は今後も続く、それが福島の復興を妨げ続ける結果になるのです。
6.ITニュースクリッピング「未来百貨店」
7.津田大介のデジタル日記
もスキップして、
8.140字で答えるQ&A
Q1:ネトウヨの発言を調査する方法は?
Q2:選挙後の政治家や政党のネット利用についてどう思う?
Q3:読書時間はどうして確保してる?
Q4:おすすめの電子リーダーは?
今週は、このQ&Aがいつもの三倍くらい面白いです。なぜかと言うと、近著『ネットのバカ』でもおなじみの、中川淳一郎さんが津田さんともども解答役を回ってるからですね。終始ニュートラルで、感情の抑制の利いた津田さんは、最後まで爆発しないブルース・リーみたいなものです。本来フェアネスに反したことが大嫌いで、憤りとか感じることは相当に多くても、割と耐えて平常心で上品にこなそうとする。それだと、読者はカタルシスがない。中川さんは、下ネタオーライの切り捨て御免の人ですから、白い津田大介と黒い中川淳一郎のコントラストが絶妙なわけです。
中でもネトウヨの発言ソースをどこにとればいいかということを、細かく答えてるA1が抜群に面白いですね。
「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」( http://www.j-nsc.jp/ )とか「てきとう」( http://blog.livedoor.jp/googleyoutube/ )とか、さらに
このへんは、中川さんの独壇場、さらなるソースも提示しているので、チェックすると面白いです。
9.速水健朗の「本を読まない津田に成り代わってブックレビュー」《第39回》
──Google、Wikipedia、Yahoo!知恵袋時代に本を書くということ
今回扱っているのは、澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』ですが、大事な発言を速水さんはされていますね。
後の段落に、プロとしての物書きの今後の条件、差別化が要約されていますね。
10.渡辺文重の「週刊有料メルマガレビュー」《第36回》
岡田ぱみゅぱみゅさん比較され、このところ人気で水をあけられている渡辺さんは、サッカー、アニメと来て、今回は「食」の特集で攻めようとします。
渡辺さんは、長大なメルマガのエッセンスを短く要約するのに長けているのですが、その逆の作業は苦手なんですね。短いちょっとしたエピソードを、いかに面白おかしく語ることができるのか。
これは岡ぱみゅさんだと、3倍から5倍に引き伸ばして、十倍くらい盛り上げることのできるネタです。それができないのは、渡辺さんの中で、抑制が効きすぎている、つまり自分でブレーキをかけてるせいだと思います。
抑制には二種類あって、感情の抑制と感覚の抑制があります。渡辺さん個人のキャラとして、感情の抑制はあってもよいと思いますが、感覚の抑制はリミッターを外した方がいいのではないかと思います。感覚の抑制の逆は何かと言うと、それはアニメでもサッカーでも、臨場感豊かな描写であったり、たとえでだったりすることです。「うまかった」「うまかった」「おいしい」、同意の言葉が三度出てきます。これを他の言葉で置き換え、どう読者にアピールするようにイメージ豊かに表現できるか。それができるようになると、渡辺さんは鬼に金棒なんですけどね。
というわけで、ふだん真摯なリプライやRT,FAVを多数いただいている渡辺さんに対し、本人が今感じている壁を乗り越えるための、アドバイスめいたことを書いてしまいました。
11.岡ぱみゅの「がんばれ! 紙メディア!」《第18回》──続・戦争を描いた名作漫画
こうして見ると、やはり岡田ぱみゅぱみゅさん(以下岡ぱみゅ)の文章のうまさは傑出していることがわかるのです。そのうまさは、自由な連想によるイマジネーションの広がりと、それを裏付ける博識さ、難解な世界も下世話なたとえを交えながら、口語体でリズミカルに表現する雄弁さにあります。
ここでジブリの元ネタをしっかり押さえた上で、山本昌という野球ネタ、高橋みなみというAKBネタとイメージを広げ、自由に言葉を組み合わせながら、独自の世界を築いているわけです。その中に、架空の会話文が挿入されていることも、イメージの世界を広げ、言葉に感情とリズムを与えていることに注目したいですね。岡ぱみゅが、漱石並の名文家というのは、そういうことです。逆に言えば、渡辺さんの目指すべき文章は、鴎外みたいに脱線しないストイックスタイルの徹底かもしれないと思ったりもします。
そんな前口上の後で、取り上げているのは先の戦争に関わる三つの作品。
■中沢啓治『はだしのゲン』
■水木しげる『総員玉砕せよ!』
■おざわゆき『凍りの掌』
特に、優れているのは、漫画という絵で表現された極限描写を、文章に置き換える変換能力の高さです。さりげなくはさんだ笑える自己批判も見逃せません。
岡ぱみゅのアイコンは、以前はアカウント名にしていた岡田真澄さんにそっくりではあるけれど、実はスターリンの肖像画であるということは案外知らない人もいるので、念のため。
というわけでこの後、さらに
12.今週のゼゼヒヒ
13.メディア・イベント出演、掲載予定
14.MIAUからのお知らせ ──日本における海賊党ムーヴメント
15.プレゼントコーナー『プア充 ──高収入は、要らない──』
16.ネオローグユニオン
と津田マガは続いているのすが、また保存しないうちに、右上をクリックしてページが消えてしまうという失敗を繰り返す前に、保存をかけることにするのでこのへんで。
◆津田大介メールマガジン『メディアの現場』
http://tsuda.ru/tsudamag/
◆津田マガキュレーションバックナンバー
津田マガキュレーション Vol.89
津田マガキュレーション Vol.88
津田マガキュレーション Vol.87
津田マガキュレーション Vol.86
津田マガキュレーション Vol.85
津田マガキュレーション Vol.91をお送りします。
Vol.90はどうしたのかと言われそうですが、半分くらい書いたんですね。で、後は下り坂と思って、参照してた他のページを閉じたはずが、書いてたページも閉じてしまいました。途中保存もしてなかったので、要するに記事全部消えちゃったってことです。
その後、仕事がいそがしくなりまして、本も堀江貴文さんとか東浩紀さんとか新刊の書評を色々まとめてたら、Vol.91が出てしまいました。今、Vol.90を書くこともできないわけではないのですが、内容的な充実度はVol.90の方が高くて、時間がかかりそうなんですね。
というわけで、比較的時間がかからなそうで、鮮度の高いVol.91をまず片付け、後は時間が許せばということでいこうと思ってます。始めた以上は、欠番ができるの格好悪いですからね。
0.ふだん本を読まない津田大介が本を読んで書評を書いた!
巻頭言は、津田さんの書評ですね。津田マガには「本を読まない津田に成り代わってブックレビュー」というコーナーがあるわけですが、速水健朗さんの存在理由は?ってツッコミが必ず入るでしょうね。
まあ、津田さんが本を読まないと言っても、忙しくて自分の好きな本を読みたい時に読めないということで、対談とかインタビューとか、話題に広がりと深みを持たせるためには、相手の新刊くらいは読まないと話にならないわけです。そうでないと、相手が筋道立てて本の中で説明していることを一から説明しなくてはいけませんから。
また、後のQ&Aでも出てきますが、津田さんの場合、本の帯に書く推薦文とか求められる場合もあるわけですね。実は、読まなくても、本の内容を聞いてれば推薦文は書けるわけですよ。要するに、ふだん接してる人物評を前面に出して、後関連づけるというやり方ですね。「○○さんは××について隅から隅まで知り尽くした人である。その○○さんが、××について書いた!これは面白くないわけがない!」これ、使えるフォーマットでしょ(笑)。
もちろん、津田さんは真面目な人ですから、そんな手抜きはしないで、走り読みとかして、何とか書くわけです。そのへんの苦労も、この巻頭言の中には含まれていますね。
さて、この巻頭言で津田さんが紹介してるのは、三冊。
一冊は竹田圭吾さんの『コメントする力』(PHP)
なぜ竹田さんはどうしてここまで短い時間の中で濃密な情報が詰まっているコメントができるのか、その秘訣がコメントを見ているだけではわからなかったんですよね。本書はどのように情報を仕入れて整理し、限られた状況のなか適切で「しみ込むコメント」をすればいいのか、そのためのノウハウが「ここまで明かしちゃっていいの?」とばかりに開陳されてまして、個人的にもとても参考になる本でした。
このところ津田さんとは接点の多い竹田先生の新刊。これは役に立ちそうで面白そうな本ですね。
二冊目は、芦田宏直さんの『努力する人間になってはいけない─学校と仕事と社会の新人論』(ロゼッタストーン)
芦田さんも、津田マガeXtremeに登場し、面白かったと評価の高く、これを機会にツイッター(@jai_an)をフォローした方も多かったようですね。
光栄なことに、この本で僕は帯の推薦文を頼まれました。なにしろ496ページもある大作なので全部読んで推薦文を書くのは骨が折れましたが、読んで良かったと心底思えるすばらしい本でした。
そんなこんなで読まないと言っても、立場上読まざるをえない本が毎週何冊か出てくるわけですね。
三冊目は、清水一利さんの『フラガール 3.11 つながる絆』(講談社)
スパリゾートハワイアンズに何度か取材に訪れている津田さんとしては、これも読まないわけにゆかない本ですね。
1. 津田大介が解き明かす「2ちゃんねる」の個人情報漏洩事件の謎
ちょっと改題しています。今週のニュースピックアップは、「2ちゃんねる」のあの事件です。実にタイムリーな企画で、この細かい経緯をすらすらとこのタイミングで言えるのは、津田さんの独壇場ですね。
書き込み数が1000に達したスレッドは、2ちゃんねるのサーバ内の「過去ログ倉庫」に保存されます。また、一定期間書き込みがなかったようなスレッドも同様に「過去ログ倉庫」に保存されます。このときに書き込みのデータは「dat」(ダット)と呼ばれる、ある種のテキストデータ形式で保存されているんですね。そしてこの過去ログ倉庫にあるdatファイルには一般ユーザーはアクセスできなくなってしまいます。しかし「●」を買えば、この過去ログ倉庫のdatファイルを読むことができるんです。
過去ログ読みたいと思ってても読めない仕掛けが、まずここにあったわけですね。正式名称は「2ちゃんねるビューワー」というこのサービスのメリットは他にも色々あるわけです。
2ちゃんねるのヘビーユーザーにとってはこの「●」を購入することで得られるおまけの特権がさらに魅力的なんです。それが2ちゃんねるへの書き込みや新規スレッド作成への優遇策です。
スレッドとか立てられると、煽りやすく、ある程度言論をコントロールできるので、企業や官庁の人間の一部が飛びついたのもうなずけます。今回の事件の特徴もわかりやすく説明していますね。
今回の2ちゃんねるの個人情報漏洩事件は、メールアドレスやクレジットカード情報だけでなく、「●」ユーザーとその書き込みが紐付けられてしまいました。これが従来の個人情報漏洩とは異なるところですよね。
さらに、深刻な事態を招いた理由として、彼らの思わぬ情弱ぶりも挙げられます。捨てメールアドレス使ってれば、これほどまでに追い込まれることはなかったんですが、油断していたのでしょう。
特に今回ネットで書き込みを晒されてしまった人たちは、メールアドレスを公開していたり、あるいは会社や官公庁などの特徴のあるドメインのメールアドレスを「●」のIDに使っていた人たちです。だから、自分の氏名や社会的立場と紐付かない捨てメールアドレスを使っていれば情報が漏洩しても、それが「○○社の××だ」ということはわからなかったとも言えます。
この後もさらに、津田さんは今回の漏洩事件の流出元「N.T. Technology」社 の問題や、2ちゃんねるの法人化計画が未遂に終わったことなど興味深い問題に触れていますね。
2.フリーターから大学准教授へ!哲学者萱野稔人の”成り上がり人生”
元のタイトルは「言葉の力が日本を救う──萱野稔人が描く“未来のニッポン”」なんですが、k硬い気がしたので面白そうなものにつけかえました。萱野さんは津田塾大の准教授ですね。要するに、津田女に囲まれたうらやましい人生を送っているわけで、そこに至るまでのキャリア形成の方が今の若い人には興味があるのではないでしょうか。
子供のころは、クワガタやサワガニ、ドジョウ採りに夢中になっていた萱野さん。中学時代は、ハンドボール部でスパルタ風なしごきを受けていました。高校時代はバンドの活動に明け暮れ、大学受験で早稲田を受けたのがこの道に進むきっかけでした。大学でタモリも入っていたジャズ研究会に入ってみると、知識のレベルが段違いで、カルチャーショックを受けたわけですね。
田舎で「うぉー!」ってやっていたのとは全然違うレベル。それで、ドラムに対するやる気がなくなっちゃった(笑)。それから、大学の先輩たちが哲学とか思想、文学、映画にすごく詳しいんですよ。「お前、こんなのも知らないのかよ!?」とか言われて、自分の無知さを痛感しましたね。でも、そのおかげでいろいろないろんな本を読むようになりました。
気がついたら大学卒業してて、バイトやらなきゃいけなかった。そのころはみんなフリーターやってても、ネガティブなイメージを持ってなかったわけですが、
自由に動くためには単発のバイトしかないけれど、1日分を稼ぐために半日をバイト探しに費やさなきゃいけないのはすごく非効率で。それで、やっぱり普通に就職したほうがいいと
思いました。
就職するには、大学院出た方がいいけど、日本はあまり気が進まないので、流行のフランス現代思想をとフランスへ行き、『現代思想』に発表した文章も好評。でも、フランスに残る気はなかった。それは…
基本的に、哲学は言葉を使って認識を深めていく学問です。だから、「言葉をうまく使って、事象をエレガントに表現する」ということをとても重視する。つまり、言葉が一番大事なんですね。そのときに、母語以外の言葉でずっとやっていくのはキツいかな、というところがありました。
一時は闇金の取立て業のバイトも考えた萱野さんですが、翻訳の仕事とかで食いつないでた。その後、どうやって大学へもぐりこんだか、肝心な部分は書いてなかったのが、残念でした。
文学と比べ、哲学のおいしい部を萱野さんはこう言い表しています。
文学研究はいくら文学を研究しても文学になれないんですよ。たとえば、夏目漱石の作品を研究して論文を書いても、その論文は小説にはなれないじゃないですか。でも、哲学の世界ではちがう。たとえば、カントについて研究して論文を書くと、その論文自体が自分の哲学になるんですね。
後、言葉の力についてとても大事なことを言っています。
学生の知的レベルは言葉を扱う能力に比例している。それは、言葉を扱う能力が物事をしっかりと理解しているかどうかのバロメータだということもできます。(強調引用者)
学生時代の経験の差なんて大したことはない。就職試験で、差がつくのは、
ではなにが合否の分かれ目になるかというと、自分の経験したことをどこまで知的に咀嚼してわかりやすく説明できるのか、というところなんですよね。
(強調引用者)
就活前の学生さんは、ここしっかりチェックしておきたいですね。そのためにどうすればいいか。
日ごろから言葉を使った説明がうまい人は、やっぱり頭の回転もはやいです。本をたくさん読むとかアカデミックな知識をたくさんもっているということよりも、自分の気持ちを自分の言葉でしっかりと説明できるようになるということを大事にしてほしいと思っています。(強調引用者)
3.世界のデータジャーナリズム最前線《第28回》
──Data Journalism Award 2013: "Data-Driven Apps"部門受賞作
「フランスにおける男女間の給料格差」
4.今週の原発情報クリッピング
とスキップすることにします。
5.小嶋裕一の「原発観測」──「福島第一原発観光地化計画」は実現可能か?放射線量から考察する25年後の「フクシマ」
では、小嶋さんの「結論」が興味深いですね。
福島第一原発観光地化計画は可能か──すでに観光地化が進んでいるチェルノブイリを訪れた経験から言えば、福島の観光地化も可能になるだろうというのが現時点での結論である。放射線量や避難指示区域の設定の状況を比較すると、福島の観光地かがチェルノブイリより早く進む可能性もある。
興味深いと言うのは、私とは考え方が違うということです。その理由は汚染水の流出が長期にわたって続き、地球環境に影響を与え続けることで、国内的にはいくつか支援の動きはあっても(それに関しては私は賛同しますが)、国際的には福島は支援すべき「悲劇の土地」になりきれず、地球環境の対する脅威の場所であり続けるためというのが、私個人の考えです。この原因は、初動を東電任せにし、しかも世界の協力を仰がず、問題を国内に抱え込みながら実質お手上げ状態となってしまった日本政府のガバナンスのなさ、そして報道面においてその問題点を追求せず、官報に堕したマスメディアの責任によるところ大です。要するに、対処が科学的なベストエフォートではなく、情報操作によってその場しのぎを続けており、この状態は今後も続く、それが福島の復興を妨げ続ける結果になるのです。
6.ITニュースクリッピング「未来百貨店」
7.津田大介のデジタル日記
もスキップして、
8.140字で答えるQ&A
Q1:ネトウヨの発言を調査する方法は?
Q2:選挙後の政治家や政党のネット利用についてどう思う?
Q3:読書時間はどうして確保してる?
Q4:おすすめの電子リーダーは?
今週は、このQ&Aがいつもの三倍くらい面白いです。なぜかと言うと、近著『ネットのバカ』でもおなじみの、中川淳一郎さんが津田さんともども解答役を回ってるからですね。終始ニュートラルで、感情の抑制の利いた津田さんは、最後まで爆発しないブルース・リーみたいなものです。本来フェアネスに反したことが大嫌いで、憤りとか感じることは相当に多くても、割と耐えて平常心で上品にこなそうとする。それだと、読者はカタルシスがない。中川さんは、下ネタオーライの切り捨て御免の人ですから、白い津田大介と黒い中川淳一郎のコントラストが絶妙なわけです。
中でもネトウヨの発言ソースをどこにとればいいかということを、細かく答えてるA1が抜群に面白いですね。
「自民党ネットサポーターズクラブ(J-NSC)」( http://www.j-nsc.jp/ )とか「てきとう」( http://blog.livedoor.jp/googleyoutube/ )とか、さらに
中川:ツイッターでネトウヨを見つけるには、目視なら「日の丸アイコン」で、検索するなら「twpro」( http://twpro.jp/
)ですよ。これはツイッターのプロフィールにあるワードからユーザーを検索できるサービスなので、たとえば「J-NSC」とか「愛国」「マスゴミ」で検索したりすると……。
このへんは、中川さんの独壇場、さらなるソースも提示しているので、チェックすると面白いです。
9.速水健朗の「本を読まない津田に成り代わってブックレビュー」《第39回》
──Google、Wikipedia、Yahoo!知恵袋時代に本を書くということ
今回扱っているのは、澁川祐子『ニッポン定番メニュー事始め』ですが、大事な発言を速水さんはされていますね。
『ニッポン定番メニュー事始め』は、カレー、餃子、牛丼、ナポリタン、インスタントラーメン、テリヤキバーガー、メロンパンなど、日本人にとって身近なメニューの歴史を調べるという趣旨の本です。
「なんだ、そんなのググればわかるだろ?」とか、「Wikipediaをまとめれば書けそうだな」なんて思った人もいるかもしれません。しかし、本書はグーグルで見つかる程度の情報も、Wikipediaの情報も、そして定説とされていることも、そして、自らが「元祖」と自称する人たちすらも、それらがすべて間違っているという前提で歴史をたどっていきます。(強調引用者)
後の段落に、プロとしての物書きの今後の条件、差別化が要約されていますね。
10.渡辺文重の「週刊有料メルマガレビュー」《第36回》
岡田ぱみゅぱみゅさん比較され、このところ人気で水をあけられている渡辺さんは、サッカー、アニメと来て、今回は「食」の特集で攻めようとします。
渡辺さんは、長大なメルマガのエッセンスを短く要約するのに長けているのですが、その逆の作業は苦手なんですね。短いちょっとしたエピソードを、いかに面白おかしく語ることができるのか。
津田氏はメニューを一通り見ると、私たち3人が「いくら津田氏でも、空気を読んで、これは頼まないだろう」と思っていた高級牛肉を「これ4人前」と言って頼んだのでした。この時点で、1人1万円以上の出費が確定。確かに、うまかったですよ。本当にうまかった。牛肉って、ここまでおいしい食材だったのかと、感動しました。なお、この時の出費は、今でも私が外食で払った最高金額となっています。
これは岡ぱみゅさんだと、3倍から5倍に引き伸ばして、十倍くらい盛り上げることのできるネタです。それができないのは、渡辺さんの中で、抑制が効きすぎている、つまり自分でブレーキをかけてるせいだと思います。
抑制には二種類あって、感情の抑制と感覚の抑制があります。渡辺さん個人のキャラとして、感情の抑制はあってもよいと思いますが、感覚の抑制はリミッターを外した方がいいのではないかと思います。感覚の抑制の逆は何かと言うと、それはアニメでもサッカーでも、臨場感豊かな描写であったり、たとえでだったりすることです。「うまかった」「うまかった」「おいしい」、同意の言葉が三度出てきます。これを他の言葉で置き換え、どう読者にアピールするようにイメージ豊かに表現できるか。それができるようになると、渡辺さんは鬼に金棒なんですけどね。
というわけで、ふだん真摯なリプライやRT,FAVを多数いただいている渡辺さんに対し、本人が今感じている壁を乗り越えるための、アドバイスめいたことを書いてしまいました。
11.岡ぱみゅの「がんばれ! 紙メディア!」《第18回》──続・戦争を描いた名作漫画
こうして見ると、やはり岡田ぱみゅぱみゅさん(以下岡ぱみゅ)の文章のうまさは傑出していることがわかるのです。そのうまさは、自由な連想によるイマジネーションの広がりと、それを裏付ける博識さ、難解な世界も下世話なたとえを交えながら、口語体でリズミカルに表現する雄弁さにあります。
なにやら宮崎駿監督が引退表明とのこと [*1] 。御年72歳なので、命を削るように心血注いで長編をつくるのは、それはもう大変なのだと思われます。中日の山本昌さん [*2] も72歳になったら「これからは若い奴らの時代だ……」とプロ引退しちゃうんでしょうか。ここでいうプロとはラジコンのことですので、趣味の野球は米寿を迎えるぐらいまで続けてくれると思いますが。
宮崎駿監督が引退ということになると、次のジブリ作品は誰が監督やるんでしょうか。高橋みなみ総監督 [*3] でしょうか。まぁ、今後も宮崎駿作品を観たい私としては、ベネチア映画祭における引退会見で「宮ちゃんは、アニメ監督を、やめへんで〜!!」[*4] と叫んで歌に突入したり、終身名誉監督の肩書きを名乗ったり、監督を引退して「宮崎ゼネラルマネージャーと鈴木エグゼクティブプロデューサー」という体制で今後もやっていってもらったりといろいろ期待しているのですが、仮に今作『風立ちぬ』[*5] が最後の長編作品ということになると、作中の「創造の10年」という言葉が、まさに重く響きます。
ここでジブリの元ネタをしっかり押さえた上で、山本昌という野球ネタ、高橋みなみというAKBネタとイメージを広げ、自由に言葉を組み合わせながら、独自の世界を築いているわけです。その中に、架空の会話文が挿入されていることも、イメージの世界を広げ、言葉に感情とリズムを与えていることに注目したいですね。岡ぱみゅが、漱石並の名文家というのは、そういうことです。逆に言えば、渡辺さんの目指すべき文章は、鴎外みたいに脱線しないストイックスタイルの徹底かもしれないと思ったりもします。
そんな前口上の後で、取り上げているのは先の戦争に関わる三つの作品。
■中沢啓治『はだしのゲン』
■水木しげる『総員玉砕せよ!』
■おざわゆき『凍りの掌』
特に、優れているのは、漫画という絵で表現された極限描写を、文章に置き換える変換能力の高さです。さりげなくはさんだ笑える自己批判も見逃せません。
本当にスターリンというのは悪い奴で、こいつの肖像画をツイッターのアイコンにしてるような奴もロクな人間じゃない。きっと下ネタでTLを埋めるようなクズです。はい。すみません。
岡ぱみゅのアイコンは、以前はアカウント名にしていた岡田真澄さんにそっくりではあるけれど、実はスターリンの肖像画であるということは案外知らない人もいるので、念のため。
というわけでこの後、さらに
12.今週のゼゼヒヒ
13.メディア・イベント出演、掲載予定
14.MIAUからのお知らせ ──日本における海賊党ムーヴメント
15.プレゼントコーナー『プア充 ──高収入は、要らない──』
16.ネオローグユニオン
と津田マガは続いているのすが、また保存しないうちに、右上をクリックしてページが消えてしまうという失敗を繰り返す前に、保存をかけることにするのでこのへんで。
◆津田大介メールマガジン『メディアの現場』
http://tsuda.ru/tsudamag/
◆津田マガキュレーションバックナンバー
津田マガキュレーション Vol.89
津田マガキュレーション Vol.88
津田マガキュレーション Vol.87
津田マガキュレーション Vol.86
津田マガキュレーション Vol.85