つぶやきコミューン

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堀江貴文『なぜ堀江貴文の本はすべてがベストセラーになるのか?』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

堀江貴文『なぜ堀江貴文の本はすべてがベストセラーになるのか?』は、本を出しているけれども、売れていない人のための本だ。そして、本を出そうと思っているけれど、無理だと思っている人のための本でもある。

 

この本を著者が出そうと思ったのは、本を売るための本がいままで書かれていなかったためだ。もちろん、西野亮廣の『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』や、岩崎夏海の『もしドラはなぜ売れたのか?』のように、著書を出すまでのサクセスストーリーをまとめた本は存在する。けれども、それはあくまでのその著者の戦略・戦術であって、誰にでも使える方法を網羅的にまとめたものではなかった。

 

私はこのようにして本を出し、売ったという話と、あなたはこのようにして本を出し、売ることができるだろうとの間には、大きな隔たりがあるのだ。

 

このタイトルを見た人からは、ホリエモンくらいネームバリューがあれば、何もしなくても本は売れるだろうという声が、聞こえてくるかもしれない。

 

しかし、今は芥川賞や直木賞の受賞者であっても、初版五千部ゆくかゆかないかの場合も少なくない。テレビに出まくっているタレントの本も、話題にならなければあっという間に本屋の店頭から消えてしまう時代である。

 

そんな中で、堀江貴文はコンスタントに本をヒットさせてきた。その具体的な数字データをベースに語っている点が本書の大きな魅力だ。印税がいくらで、経費がいくらのような生臭い話も避けたりしない。だから話にリアリティがあり、信頼できる。

 

 この本はズバリ「本を書いて、売るための本」だ。

 

 その分野で僕は、日本でも10本の指に入ると思う。なぜなら、初版3万部の本をほぼ毎月のペースで出し続けているからだ。さらに『ゼロ』は40万部、『多動力』は16万部、本音で生きるは20万部を超えている。毎年ミリオンセラーを出し続けているようなものだと言っても過言ではないだろう。(注:2017年6月現在)

 

また、堀江は、紙の本と電子書籍、メルマガの間に大きな違いを認めていない。すべてを同じ平面上にのせ、単純な数値データの比較として考えている。そうすることで、少しずつ既成概念による洗脳が解除されてゆく。

 

メルマガの売り上げが1億7千万円から経費を諸々差し引いた金額を1億3千万円だと仮定しよう。1億3千万円稼ぐのに、どれだけの本を売らなければならないか。ハードカバーで1冊1300円、印税10%の本を売ると計算すると、自分が手にできる印税は1冊につき1300円。1億3千万円を130円で割ると100万。つまり、僕がメルマガから手にしている金額は、1年間で100万部のッハードカバーを売ったのと同じということになる。

 

本を売るためには、企画段階からさまざまな工夫や努力がいる。編集者の選定。タイトルのつけ方。装丁、帯文の依頼まで、そのすべてがここに書かれている。

 

その最たるものは、やはり地方の本屋を何十何百と回ったりするような営業努力である。水野敬也の『夢をかなえるゾウ』も、著者の地道な書店回りがなければ、ミリオンセラーにはなれなかったろう。もう一つは仲間を増やすことである。メルマガ定期購読者のような固定客以外に、いっしょに本を作る仲間、結果的には自分たちの本として、いっしょに売ってくれる仲間を増やすことだ。

 

 僕は本を作る際、サロンのメンバーを巻き込むことが多い。僕が提案した企画をサロンメンバーが主になって進めてくれることもあるし、単純に校正をお願いしたり、意見を聴いたりすることもある。こうしてサロン内に生まれた、本の”関係者”たちは、本を自分が製作に携わった本として身内気分で購入してくれるし、自分の周りの人にも喜んで宣伝してくれる。

 

発行元が堀江貴文イノベーション大学校編集学部となっているように、この本自体がそのサンプルとなっているのだ。

 

本を出そうとしても、知名度がない、出版社とのコネクションがない、などの理由で諦める人がいる。

 

けれども、それも過去から来る思い込みにすぎない。

 

 情報の提供手段が限られていた一昔前ならいざ知らず、今は普通の人が誰でも本を作れる世の中になった。誰もが本を書ける時代が到来しているのだ。

 

今は、電子書籍の時代、インターネットとSNSの時代、クラウドファンディングの時代だ。個人が本を出すハードルも、格段に下がっている。

 

本を作るためにも、売るためにも、一人で抱え込まずに、他人を巻き込み、チームを作る、仕組みを作ればよいのだ。

 

要するに、大家や大手出版社が安閑としてベストセラーを出せる時代ではなく、工夫次第で無名の個人が本を出し、ヒットさせる

ことのできる時代、下剋上の時代なのである。

 

だから、堀江貴文といえども、本を出しぱなしでよいわけではなく、出した後のフォローも大事だ。

 

売れる本を作ったら、売れる道も作らなければならない。

 

そこで取り上げているのは、原画の展示会を開き、そこで本をお土産として勝ってもらうという西野亮廣の『えんとつ町のプペル』プロモーションの方法だ。

 

初速でバカ売れする本もあるが、じわじわと売れ続けるロングセラーとなり、いつのまにか50万部に達してしまった『ゼロ』のような本もある。早すぎる本もあるかもしれない。そうした本は、ある時急に火がついたように売れることもある。

 

 僕は普通の人が聞いてもピンとこないような、時代の最先端の話をすることがよくある。そして、そういう内容を描いた本は案の定あまり売れない。せいぜい数万部で、10万部までは届かない。最近でいうと『君はどこでも行ける』がそのパターンだ。こういう類いの本はあと5年ぐらい寝かせておけば、きっと売れてくれるだろう。

 逆に、10年前から言い続けているような話を載せた本はどんどん売れていく。世間に理解されやすいのだ。

 

堀江貴文も、単著でのミリオンセラーを目標としながらもまだ達成できていないので、そのための条件も考えようとしている。過去のベストセラーを研究してみる。あえて恥ずかしい話を入れてみる。さらに、バズるキーワードをいくつも並べることを勧めているが、もう一歩進めると、落合陽一との共著である『10年後の仕事図鑑』 にもあるような(p122)、100万人に一人の人材になる方法と同じではないかと思う。

 

100冊に1冊ある程度の特徴を三つ、一冊の本の中に詰め込むことができればよいのだ。

 

岩崎夏海の『もしドラ』であれば、高校野球とドラッカーと女子高生。

 

村上春樹の『ノルウェイの森』であれば、レトロと音楽とセックス。

 

水野敬也の『夢をかなえるゾウ』であれば、自己啓発と物語とキャラクター

 

という風に、それぞれ100冊に一冊程度のそれなりにとがった三つの要素が絶妙な加減でブレンドされると、シナジーによってミリオンセラーが生まれるのではないだろうか。

 

そんなアイデアも本書を読めば生まれてくる。

 

『なぜ堀江貴文の本はすべてがベストセラーになるのか』は、半時間かせいぜい1時間もあれば読める本だが、そこにも周到な計算がはたらいている。

 

 僕の近著『多動力』は、30分で読み終えられるように作った。SNSで拡散されやすくするためだ。最後まで読んでいない人はあまり人に感想を伝えないだろう。ましてや書評を書いてくれることもない。

(…)読み終えた読者が興奮状態にあるうちに、SNSや口コミでどんどん情報を広めてくれれば、当然初速もアップし、売り上げも大きく上がる。

 

『他動力』にせよ、本書にせよ、長くしようとすればいくらでも長くできるだろう。たとえば、いつどこの町のどの本を売りに行ったとか、書店のイベントでこんなことがあったとか、最初は変な奴だなあと思ったが話してみると結構冴えたやつでといった編集者との出会いのエピソードを入れれば三倍にでも五倍にでも膨らませることができるだろう。しかし、それは成功のノウハウとは関係のない枝葉の情報である。だからばっさり切り捨てて、誰でも理解し、即実行できるようなエッセンスだけが並んだ本になっているのだ。

 

本を売るために必要な工夫は、大体この本の中に書かれているはずだ。ここにないものを探すよりも、ここに書かれたことを片端から実行してゆけば、はじめて本を出す方法も、出した本の売り上げをのばす方法も自然に見えてくるにちがいない。

 

【 目次 】
第1章 出版神話5つのウソに騙されるな!
紙の本を出さなければニセモノ?
自分で書かないといけないなんて誰が決めた?
商業出版ではなく、自費出版はカッコ悪い?
出版社があなたの本を売ってくれるなんてウソ!
本で宣伝してはいけない?

第2章 どんなに普通の人でも100%本は出せる!
本は分業制で作ろう 
・分業の例 〜漫画の場合
・分業の例 〜『ゼロ』の場合
本のネタなんて何でもいい
売れるタイトルをつける
装丁デザインはA/Bテストを試みる
突飛なアイデアが逆転ホームランを生む
読者の自尊心をくすぐれ
売れ方をイメージして作る
他人のプロデュースはおいしい
過去のコンテンツを利用する
コミックや漫画の電子書籍化は狙い目
電子書籍カラー化が秘める可能性

第3章 誰も教えてくれない本の売り方を教えよう!
売り上げを確実に上げる営業術
自分の手で売ればファンは増える
人を巻き込んで応援者を増やす
関係者を増やすクラウドファンディング活用術
初速をつけて一気に売る 
自費出版の場合は販売経路を工夫する
出版に絡めたイベントは一石二鳥
エンターテインメントで楽しませる

第4章 僕だけが教える「ベストセラー本を作るための奥義」
過去のベストセラーを研究し、マネろ
100万部の大ヒットを生み出すキーワードを組み込む
発売前から話題にしてしまう
SNSで爆発的に拡散される本の作り方
拡散を狙ったヴィジュアルを心がける
作品の育児放棄をするな

堀江貴文・落合陽一『10年後の仕事図鑑』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略                               ver.1.1

 

 

インターネット、AI、仮想通貨、ベーシックインカムといった世界の新しい変化のなか、職業や生き方を語った『10年後の仕事図鑑』(SBクリエイティブ)は、ホリエモンこと堀江貴文と「現代の魔法使い」落合陽一の対談を再構成した本だ。

 

基本的には、話の流れはそのままだが、会話の雰囲気や脱線部分はカットし、それぞれの断章が独立して読めるように純化しながら、編集者がリライトしている。対談はあくまで相互に触発し合いテーマやトピックの広がりを得るための手段であり、実際の会話は文字数にすればこの数倍あるものだろう。だから通常の対談本にある中身の薄さは、感じられない。書き下ろしの本にまさるとも劣らないほど密度が濃いのである。

 

本書の主張は、堀江であれば『多動力』、落合であれば『超AI時代の生存戦略』『日本再興戦略』の延長上にあるが、それをさらに一歩も二歩も前に進めたものだ。重要なのは、抜群の論理的思考と情報力を持った二人が同じトピックについて語ることで、まだ来ていない未来の社会の姿や、その変化が立体的に立ち上がることである。一人ではカバーできない視野の広がり、解像度の高さに加え、両者の視点の位相差によって、読者の思考にも自由や遊びが生まれる。そこから無数の仕事や生き方のヒントが生まれてくるのである。

 

だから、読者は二人が語ること以上に、この本のさまざまなページを読んだ瞬間に生まれてくるひらめき、発想に敏感であってほしい。たぶんそのひらめきは一期一会で、二度目に読んだときには同じものが得られないか、テンションが下がってしまうものなのだ。忘れないうちに、紙でもスマホでもメモをとる。本の内容自体は逃げはしないし、電子版であればいつでもスマホやタブレットに入れておけばいつでもどこでも見返すことができるのだから。

 

実は、『10年後の仕事図鑑』は、十年の先の生き残る仕事、失われる仕事を細かく分析した本ではないのである。

 

マイケル・A・オズボーンの『雇用の未来ーーコンピュータによって仕事は失われるか』では、702の職業がコンピュータでどう自動化されるか分析しているが、そのような細かい具体的な予測に大した意味はないと堀江も落合も言う。なぜなら予想を超えた速度で社会は変わってしまうからだ。

 

 一つひとつの職業が「数年後、何%の確率でなくなるか」を、懇切丁寧に説明しているが、正直に言って、こんなものはまったくもって意味がないと思っているし、今の職業に当てはめることがナンセンス。(堀江、p125)

 

重要なのは、今すでに起こっていることの本質をしっかりととらえることだ。

 

AIによって失われる職業がある一方で、生まれる職業もある。人間が、機械によって完全に淘汰されるのではなく、人間と機械がそれぞれのメリットをすり合わせる形で、共生するハイブリッドな社会、落合陽一の言葉を借りれば「まだら」な社会へとこれから移行してゆくし、すでにその変化は始まっている。その例として、落合陽一はくら寿司を挙げている。

 

 くら寿司は、従来人がやっていたサービスの半分を機械がオートメーションで行ない、人間は機械と機械の間に入る調整役となっている。(落合、p50)

 

経営者、検事や弁護士、クリエイティブな仕事など、ひとが常識的に、この分野はあぶないと考える分野でさえも、安全地帯は存在しない。

 

大切なのは、AIによって代替不可能な人間、あるいはAIによって代替するにはコストのかかりすぎる、高い付加価値を持った人間になることだ。どの分野であろうと、そのような人間のニーズは必ず存在する。

 

 簡単にいえば、「解決するのが面倒な問題」を解く職能を考慮して、職業にすればいいのだ。あらゆる仕事がコストで考えられる時代において、「給料の高い仕事」というのは、それだけで解決すべき課題になる。

 つまり、逆をいえば、現在、その仕事をしている人に払う給料より、その仕事ができるAIんを作るコストのほうが大きければ、その仕事は人がすべきことになる。AIに代えたところで大したメリットのない職業は、なかなか最適化されないのである。(落合、p 117 )

 

職人の世界、観光業、ドローンなど、この先さらにニーズが高まる業界も存在するし、、自動運転で時間が余った分、生まれる「パッセンジャーエコノミー」のように、新しいマーケットも生まれる。

 

そのような時代に、どう生きるかといえば、組織にしがみつくのではなく、労働者がそのまま経営者となるか、あるいは幻冬舎の編集者箕輪厚介のように、会社を付加価値を高めるための拠点としながら、会社を超える複線的な活動を行うことなど、さまざまなバリエーションが考えられる。

 

  彼は、編集者として生きていく上で、「幻冬舎の社員であること」に大きな意味があることを理解している。幻冬舎のインフラをフル活用し、いつでも自分の作りたい本を出版できる環境を使いながら、自分の名をブランド化しているのだ。(堀江、p41)

 

教育改革実践家の藤原和博の言うように、オンリーワンの価値を得るには、三つの好きな世界を深めることである。100人に一人程度の価値であれば、100の三乗で100万人に一人の人材になれる。それは、仕事というよりも、遊びや趣味の延長上に存在する。

 

  嫌々働いていたところで、必死になって働いている人に負けてしまうことは目に見えている。それなら、勝ち負けなんて考えず、好きなことに没頭しよう。没頭しているうちに、君は唯一無二の存在になっている。(堀江、p123)

 未来が不安な若者には、「仕事になる趣味を3つ持て」と伝えたい。(落合、p232)

 

同じテーマを、堀江貴文は、そして落合陽一は、別の言葉で語りながら、『新世紀エヴァンゲリオン』の「瞬間心重ねて」のユニゾン攻撃のように、新しい時代の攻略ポイントをえぐるのだ。

 

『10年後の職業図鑑』では、単なるライフスタイルや、職業のマーケットの変化だけでなく、お金のありかたなど価値観の変化も語られる。

 

お金は信用を数値化したものにすぎない。お金を貯めるよりも重要なのは信用の蓄積だ。そして、この時代にはクラウドファンディングなど信用や価値の創出によって、必要なお金を調達する手段は無数に存在するようになっているのだ。

 

さらに、社会は一層キャッシュレスで済ますことができる時代へと移行しつつあり、すでにコンビニのレジを機械化してしまった中国に比べると、日本はすでに周回遅れの状態に置かれつつあるのだ。

 

つねに重要なのは、これまで社会ー学校や職場ーで教え込まれた古い価値観による洗脳から脱することだ。

 

就職活動に疲れ果てて多くの学生がメンヘラになるのは、脳や行動の不毛な習慣を刷り込まれているからである。

 

  日本の就活の手続きで履歴書を書かせる文化も、はっきりいって選考する社員および作成する応募者のどちらにとっても不便であるし、何一つ本質的ではない。根性と写経の世界である。

  就活は「他人と違うことがリスクである」なんて幻想を平気で強いてくる。信じなくていいものを信じ込まされる。周囲に染まるその瞬間が、思考停止して同じ方向を泳ぐことしかできない鰯の群れの一員になる瞬間に他ならない。(落合、pp65-66)

 

堀江貴文との共著が夢だったという落合陽一のテンションは、自ら認めるように、この本では他のどの著書よりも高い。行間にそのキレッキレのテンションに、その熱量に読者は自然に煽られる。もう時間はないのだ。

 

 社会の速度が増すほど、機械のほうがポジションを取るのが早くなる。だからこそ、今ポジションを確保しておかないと、一生ポジションが確保できなくなってしまう。問題は、生き残るか生き残れないかではない。ポジションを取るのか、溶けていくかだ。(…) 

スピード感を持ち、ここ2〜3年で動きはじめなくてはもう手遅れかもしれない。気になったことはどんどんやってみる。やりたいことがなければ、まずは今晩の夕飯を決める。笑いごとではなく、まず最低限そこからはじめてみることだ。(落合、p243)

 

最終章の「ピュアな情熱に導かれた”自分の人生”を生きよ」で二人の檄はピークに達する。

 

  かつては、何かにチャレンジするためには、様々なハードルがあった。家柄や学歴、財産、才能、人脈、経験、資格、教養ーー。今や、そんなものは何一つ持っていなくていい。勇気を持って、自信を持って、一歩踏み出せ。(堀江、p248)

 

『10年後の職業図鑑』は、就職活動を控えた大学生や社会人だけでなく、中学生や高校生、できれば小学校生にも読んでもらいたい本だ。今は、インターネットで、高度な技術や知識を習得したり、遊びの延長上でお金を稼ぎ、生業につなげたりすることも可能な時代だ。十分な収入を得ながら高校や大学へ通うなら、ベンチャーの立ち上げや、ビジネスパートナーのハンティング、研究室の活用など、全く別の意味を持ったものに変わるし、そんな回り道の必要さえないかもしれない。時代の変化はそこまで来ている。

 

  以前、平均年齢15歳の子どもたち20人弱に、簡単に作成したIoTデバイスを用いた電子工作や機械学習、ソフトウェア制作を教えるワークショップを開いたことがある。5年前であれば24歳の学生が修士論文でやるような内容なのだが、たった合計24時間で、誰一人脱落することなくハードウェアやソフトウェアを作れるようになった。つまり当時24歳の人にとっては9年分の時間があっという間にコモディテイ化してしまったというわけだ。(落合、p231)

 

親やその親とは違った速度で、彼らが人生のコースを歩きだすのを邪魔する理由はない。大人の思考パターンからぬけ出せる彼らこそは、この国の、そして世界の希望なのだから。成人になるのを待たずして、この本の読者から何十何百ものニュータイプの成功者が生み出されることだろう。

 

『10年後の職業図鑑』は、現時点において、あなたを、そしてあなたのまわりの21世紀の少年少女を、シンギュラリティに向けて最適化し、最大限進化させてくれる本である。

 

  Kindle版

 

関連ページ:

猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』1〜4

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猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』は、ファッション界を舞台に、モデル志望の少女とデザイナー志望の少年という二つの視点から描くパラレルストーリーだ。

 

藤戸千雪は高校三年生、モデル事務所ミルネージュ社長藤戸研二を父を持ちながら、158センチと身長に恵まれず、事務所もクビにされながらもパリコレのモデルになる夢をあきらめることができなかった。

 

そして、千雪のクラスメート都村育人は、服を作るのが好きで、一人被服室にこもり大量の服を作りながらも、三人の妹のために、就職を考えようとしていた。

 

けれども、育人がつくった服を着た千雪の姿がSNSで紹介されると、大きな反響を呼び、二人の運命が動き出すこととなる。

 

育人の服を着た千雪は、彼女がこの道を進むことを拒み続けていた先輩モデルのに、パリコレクションで歩く千雪のイリュージョンを垣間見せ、千雪の父親も育人の才能を認めたものの、高校生であることでデザイナーとしての採用に難色を示す。

 

その結果、育人は若手ファッションブランドの柳田一の元に預けられるが、技術的な未熟さを理由に、早々にクビを言い渡される。

 

そのまま帰ってしまえば、ファッションデザイナーとしての未来は閉ざされてしまうだろう。

 

まさにデザイナーとして生きる育人の覚悟が問われる瞬間だった。

 

他方も千雪もまた、なんとか父の事務所に採用されたものの、その身長を理由に業界での冷遇は続く。はたして、二人がデザイナーとして、モデルとして輝く日は来るのだろうか。

 

これは わたし 藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語

 

そして

 

都村育人がトップデザイナーに至るまでの物語

 

(『ランウェイで笑って 1』)

 

通常、モデルの視点、デザイナーの視点、どちらか一方に傾きやすいこの世界を、『ランウェイで笑って』は、男女二つの視点から複眼的に描くことで、男性が読んでも女性が読んでもスムーズに世界に入ることができるサクセスストーリーにまとめている。

 

王道もののスポ根もの同様、主人公たちは分不相応な夢から始めながらも、具体的な課題を一つ一つクリアし、目前の目標を達成してゆくため、しだいに読者をファッションの世界に引き込む魅力を持っている。

 

それを支えるのは、モデルの体形や姿勢によって変化するさまざまなファッションを、その制作過程を一枚の布にまで遡りながら、リアルにかつ美しく描ききる画力である。絵によって、読者が魅了できないとしたら、ストーリーそのものが説得力を失ってしまうだろう。

 

さらに、ドラマチックな山場での決め台詞も効果的だ。

 

「なりたい」って思える僕がいる

「着てほしい」って思う人たちがいる

 

 何度考えてもやっぱり僕の原点は

「服を作ることが好き」なんです

 

 “着た人が笑顔になる”

 そんな服を作れるデザイナーになりたい

 

『ランウェイで笑って 3』

 

自ら稼げるようになれば、解決してしまう都村家の貧乏は、千雪の身長不足よりも低いハードルであるためなのか。3、4巻と次々に出現するライバルや先達、活躍の舞台と、都村育人の未来はしだいに見えてきた気がするが、藤戸千雪の方はまだ切り札となるカードを手に入れていない。二つのストーリーをどうバランスをとりながら進行させてゆくのか、5巻以降作者の手腕が問われる『ランナウェイで笑って』である。

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