つぶやきコミューン

立場なきラディカリズム、ツイッターと書物とアートと音楽とリアルをつなぐ幻想の共同体
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著者別索引コミック編1【ア〜ト】 著者別索引コミック編2【ナ〜ワ】

小説
LOVE STORIES (gooブログ)
「ホワイトラブ」1
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供屮據璽僉璽螢譟璽轡腑鵝1, 2, 34, 5,  6, 7,  8,  9,  10,11-1213-14, 15, 16-17,  18,19
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セール情報

電子書籍セールのまとめ

 

メディア

『情熱大陸 #978 「科学者・落合陽一」』スーパーダイジェスト

 

Magazine Watch

國分功一郎「100分de名著 スピノザ 『エチカ』」NEW!

千葉雅也・東浩紀『実在論化する相対主義』(ゲンロンβ28,29より)

NewsPocks Magazine Autumn 2018 vol.2

NewsPicks Magazine summer 2018 vol.1

 

今月買った本 

2017年12月 2018年1月  2018年2月  2018年3月  2018年4月    2018年5月 

2018年6月   2018年7月  2018年8月  2018年9月  2018年10月  2018年11月

2018年12月

 

Book Review

694.ヴィトゲンシュタイン『小学生のための正書法辞典』 NEW!

693.落合陽一『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる人と育てる人のための教科書』

692.津田大介『情報戦争を生き抜け 武器としてのメディアリテラシー』

691.伊坂幸太郎『フーガはユーガ』

690.J・ウォーリー・ヒギンズ『60年前の東京・日本』

689.落合陽一、猪瀬直樹『ニッポン 2021-2050』

688.東野圭吾『沈黙のパレード』

687.かっぴー、うめ『アイとアイザワ 1』

686.ナカムラクニオ、道前宏子『村上春樹語辞典』

685.石田衣良『七つの試練 池袋ウエストゲートパーク将検

684.小玉ユキ『青の花 器の森 1』 

683.堀江貴文『健康の結論』

682.山口つばさ『ブルーピリオド』

681.『漫画家読本vol.6 あだち充本』

680.ポール・ウェイド『プリズナートレーニング』

679.関根虎洸『遊郭に泊まる』

678.荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない 2』

677.坂口恭平『家の中で迷子』

676.ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス察

675.落合陽一『デジタルネイチャー』(前編)  

      落合陽一『デジタルネイチャー』(後編) 

674.大童澄瞳『映像研には手を出すな!3』

673.宮田珠己『東京近郊スペクタクルさんぽ』

672.出水ぽすか・白井カイウ『約束のネバーランド』1〜9 

671. OCHABI Institute『伝わる絵の描き方 ロジカルデッサンの技法』 

670.土屋敦『男のチャーハン道』
669.岸政彦『はじめての沖縄』

668.荒川弘、田中芳樹『アルスラーン戦記 9』

667.高野秀行『間違う力』

666.三部けい『夢で見たあの子のために 2』

665.クロスケ『巨大仏巡礼』 

664.ロバート・キンセル、マーニー・ぺイヴァン『YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち』

663.東野圭吾『魔力の胎動』

662.諌山創『進撃の巨人 25』 

651.堀江貴文『堀江貴文の本はなぜすべてがベストセラーになるのか?』

650.堀江貴文・落合陽一『10年後の仕事図鑑』

649.猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』1〜4  
648.辻田真佐憲『空気の検閲 大日本帝国の表現規制』 
647.中沢新一『アースダイバー 東京の聖地』

646.畠山理仁『黙殺 報じられない”無頼系独立候補”たちの戦い』

645.あだち充『MIX 12』 

474.ラルフ・ミレ―ブス『バイコヌール宇宙基地の廃墟』
473.田中圭一『Gのサムライ』
472.宮城公博『外道クライマー』 
471.山本崇一郎『からかい上手の高木さん』1〜3
470.速水健朗『東京どこに住む?住所格差と人生格差』 
469.勝間和代『2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム』 
468.隈研吾『建築家、走る』
467.三部けい『僕だけがいない街 8』 
466.福島香織『SEALsと東アジア若者デモってなんだ!』 
465.ドリヤス工場『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』
464.松井優征・佐藤オオキ『ひらめき教室』 
463.清野とおる『増補改訂版 東京都北区赤羽 1』 
462.佐々木敦『ニッポンの文学』 
461.桜木武史『シリア 戦場からの声』 
460.平野啓一郎『マチネの終わりに』 
456.町田康『リフォームの爆発』
455.諌山創『進撃の巨人 19』
454.安田寛『バイエルの謎』 
453.松井優征『暗殺教室 19』 
452.万城目学『バベル九朔』 
451.二ノ宮知子『87CLOCKERS 8』 
450.佐々木敦『例外小説論』
449.落合陽一『これからの世界をつくる仲間たちへ』
PART2 魔法使いになる方法
448.甲斐谷忍『無敵の人 機 
447.堀江貴文責任編集『堀江貴文という生き方』
446.瀬谷ルミ子『職業は武装解除』
445.万城目学『ザ・万字固め』 
444.宮崎克×あだちつよし『怪奇まんが道』 
443.大崎善生『聖の青春』 
442.松井優征『暗殺教室 18』 
441.堀江貴文『本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方』
440.森山高至『非常識な建築業界 「どや建築」という病』 
439.森博嗣『作家の収支』
438.安田菜津記『それでも、海へ』
437.岡本亮輔『聖地巡礼 世界遺産からアニメの舞台まで』 
436.桐木憲一『東京シャッターガール』(1〜3)
435.松浦儀実・渡辺保裕『神様がくれた背番号』(1〜3)
434.落合陽一『魔法の世紀』
433.斎藤孝『語彙力こそが教養である』
432.三部けい『僕だけがいない街 7』
431.桜木紫乃『ホテルローヤル』
430.危険地報道を考えるジャーナリストの会編『ジャーナリストはなぜ戦場」へ行くのか』
429.高野秀行・清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』 
428.米澤穂信『王とサーカス』
427.岩井俊二『リップヴァンウィンクルの花嫁』 
426.和合亮一『詩の寺子屋』  
425.江川紹子『もか吉、ボランティア犬になる。』
424.松井優征『暗殺教室 17』 
423.米澤穂信『真実の10メートル手前』
422.一色まこと『ピアノの森 26』
421.ユリイカ 1月臨時増刊号 総特集 坂口恭平 
420.あだち充『MIX 8』
419.ヤマザキマリ『ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論』
418.村上春樹『ラオスにいったい何があるというんですか?』 
417.東野圭吾『人魚の眠る家』
416.水木しげる『私はゲゲゲ』 
415.西尾維新『掟上今日子の備忘録』 
414.舘野仁美『エンピツ戦記』 
413.岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』 
412.増田俊也・一丸『七帝柔道記 2』 
411.ウエルベック『服従』
410.國分功一郎監修『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』
         『ジル・ドゥルーズの「アベセデール」』2(A-F) 
409.二ノ宮知子『七つ屋しのぶの宝石匣 2』
408.島田裕巳・中田考『世界はこのままイスラーム化するのか』
407.小林よしのり・宮台真司・東浩紀『戦争する国の道徳』 
406.伊坂幸太郎『陽気なギャングは三つ数えろ』
405.和夏弘雨×碧海景『火葬場のない町に鐘が鳴る時 3』
404.出口治明『人生を面白くする本物の教養』 
403.保坂和志・小沢さかえ『チャーちゃん』
402.朝井リョウ『武道館』
401.森田真生『数学する身体』
400.吉本ばなな『ふなふな船橋』
      吉本ばなな『ふなふな船橋』PART2(固有名詞辞典)
399.上杉隆『悪いのは誰だ!新国立競技場』
398.北条司『エンジェル・ハート 2ndシーズン 12』
397.小橋めぐみ『恋読 本に恋した2年9ヶ月』
396.会田誠『美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか』
395.飲茶『14歳からの哲学入門』
394.板垣恵介『刃牙道 8』
393.星野智幸『呪文』
392.辻田真佐憲『たのしいプロパガンダ』
391.松井優征『暗殺教室 16』
390.坂口恭平『家族の哲学』  
389.石川美子『ロラン・バルト』 
388.羽海野チカ『3月のライオン 11』 
387.村上春樹『職業としての小説家』
386.羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』 
385.二ノ宮知子『87CLOCKERS 7』
384.古市憲寿『保育園義務教育化』 
383.ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 掘 
382.又吉直樹『東京百景』
 PART2(地名辞典)
381.ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』
380.畑中章宏『『日本残酷物語』を読む』
379.村上春樹『村上さんのところ』 
PART2(人名・作品名辞典)
378.辻田真佐憲『ふしぎな君が代』
377.三部けい『僕だけがいない街 6』
376.藤沢数希『ぼくは愛を証明しようと思う。』 
375.坂口恭平『幸福な絶望』
PART2(地名索引) 
PART3(人名索引) 
   PART4 (書名索引) 
PART5 (音楽・映画索引)
坂口恭平の熊本ーそれからー NEW!
374.板垣恵介『刃牙道 6』 
373.堤未果『沈みゆく大国 アメリカ <逃げ切れ!日本の医療>』
372.五十嵐泰正・開沼博編『常磐線中心主義』
371.松井優征『暗殺教室 15』
370.伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』
369.岸政彦『断片的なものの社会学』
368.吉田修一『森は知っている』
367.甲野義紀『今までにない職業をつくる』
366.増田俊也編『肉体の鎮魂歌』
365.和夏弘雨『火葬場のない町に鐘が鳴る時』1、2
364.伊坂幸太郎『火星に住むつもりかい?』
363.北条かや『整形した女は幸せになっているのか』
362.津田大介×西きょうじ『越境へ。』
361.又吉直樹『第二図書係補佐』
360.茂木健一郎『東京藝大物語』
359.あだち充『MIX 7』 
358.堀江貴文『あえて、仕事から外れる。逆転の仕事論』
357.吉川浩満『理不尽な進化』
356.椹木野衣『アウトサイダー・アート入門』
355.松井優征『暗殺教室 14』 
354.黒柳徹子『トットひとり』 
353.東野圭吾『ラプラスの魔女』 
352.福島香織『本当は日本が大好きな中国人』
351.田中圭一『神罰 1.1』 
350.國分功一郎『近代政治哲学』 
349.米澤穂信『満願』
348.海堂尊『スリジエセンター1991』 
347.増田俊也×一丸『七帝柔道記 1』
346.千葉雅也監修『哲子の部屋掘
345.高橋源一郎『デビュー作を書くための超「小説」教室』
344.國分功一郎監修『哲子の部屋 供  
343.荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の漫画術』
342.國分功一郎監修『哲子の部屋 機
341.柴崎友香『パノララ』
340.北条司『エンジェル・ハート 2ndシーズン 10』 
339.常岡浩介『イスラム国とは何か』
338.ヤマザキマリ『国境のない生き方』
337.水道橋博士『藝人春秋』(文春文庫版)  
336.大塚明夫『声優魂』
335.國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(1)
                   『暇と退屈の倫理学』(2)
334.鈴木みそ『ナナのリテラシー 1』 
332.又吉直樹『火花』
331.ニコ・ニコルソン『ニコ・ニコルソンのマンガ道場破り』
330.中森明夫『寂しさの力』
329.岩田健太郎『サルバルサン戦記』
328.橋本幸士『超ひも理論をパパに習ってみた』
327.福島香織『中国複合汚染の正体』  
326.猪瀬直樹『救出 3.11気仙沼公民館に取り残された446人』
325.谷本真由美×ポール・ロブソン『添削!日本人の英語 PART2
324.坂口恭平『ズームイン、服!』
323.荒川弘×田中芳樹『アルスラーン戦記 3』
322.内藤正典『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』
321.ヤマザキマリ×とり・みき『プリニウス 供
320.苫米地英人『『21世紀の資本論』の問題点』 
319.阿部和重・伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』
318.三部けい『僕だけがいない街 5』
317.増田俊也『VTJ前夜の中井祐樹』
316.水野敬也『夢をかなえるゾウ 3』
315.岩崎夏海『『もしドラ』はなぜ売れたのか? 
314.フランソワ・ヌーデルマン『ピアノを弾く哲学者』  
313.あだち充『MIX 6』
312.石田衣良『余命一年のスタリオン』
311.諌山創『進撃の巨人 15』 
310.アレックス・カー『ニッポン景観論』 
309.浦沢直樹・長崎尚志『MASTERキートン Reマスター』  
308.倉方俊輔・柴崎友香『大阪建築 みる・あるく・かたる』
307.坂口恭平『隅田川のエジソン』 
306.貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン 14』  
305.堀江貴文&テリヤキ編集部『ばかウマ』 
304.板垣恵介『刃牙道 3』
303.岩田健太郎『「感染症パニック」を防げ!』
302.二ノ宮知子『七つ屋志のぶの宝石匣 1』 
301.辨野義巳『大便通』
300.船曳健夫『旅する知』 
299.柄谷行人『遊動論 柳田国男と山人』 
298.増田俊也・原田久仁信『KIMURA 4』 
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ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン『小学生のための正書法辞典』

JUGEMテーマ:自分が読んだ本 文中敬称略

 

 

不世出の天才哲学者ヴィトゲンシュタインが、生前に出版した本はわずかに二冊、『論理哲学論考』(1922年)とこの『小学生のための正書法辞典』(1926年)のみであった。本書は、その初の邦訳であり、訳者の一人である丘沢静也による解説、ヴィトゲンシュタインによる序文、本文からなっている。

 

正書法辞典そのものは、日本語の訳語こそ付されているものの、特に説明もない単語リストにすぎないし、読書の対象になるようなものではない。それを補うためか、かなり長い解説が付されている。

 

『小学生のための正書法辞典』は、『論理哲学論考』を書きあげ、哲学の問題をすべて解決したと考えたヴィトゲンシュタインが、小学教師へと転身をはかった際に、作った冊子である。生徒一人一人のスペルミスをいちいち直していたのではきりがない、だが一般の辞書は高価で、大きすぎ、収録単語の選択も生徒向きではないと考えたヴィトゲンシュタインが、生徒に作らせた「単語ノート」がその原型となっている。

 

その特徴は、第一に大文字で始まる名詞の前に冠詞が置かれて記されていること、その結果、その名詞が男性名詞か、女性名詞か、中性名詞か、一目でわかるようになっている。

 

 ドイツ語の名詞は、いつも大文字で始まり、男性名詞の定冠詞はder、女性名詞の定冠詞はdie、中性名詞の定冠詞はdasだから、この方式だと、名詞の性別まで一目瞭然で、実用的でもある。(解説)

 

また、完全なアルファベット順を取らず、幹語の後に、その派生語や同意語、動詞の場合には活用形、形容詞の場合には比較級と最上級、実際の活用例などが並べられ、かなり親切な構成になっている。

 

つまり観念的な一つのルールではなく、実用性の側面から、さまざまな要素を取り入れて編纂されたものなのである。

 

その意味で、ヴィトゲンシュタインの言語観の大きな転換点を示すものとしてとらえることができる。

 

『小学生のための正書法辞典』は、前期の『論考』から後期の『探求』への転身を予告する、記念すべき小冊子と言えるのではないだろうか。正確さに病的なまでにこだわり、傍若無人で相手のことなど眼中にないヴィトゲンシュタインが、生徒の使い勝手をしっかり考えて、原理原則にこだわらず、柔軟に妥協しながら作った辞典なのだから。(解説)

 

トルストイに憧れ、莫大な遺産は若い芸術家らに分与し、田舎でのロハスな生活を送りながら、生徒に聖書を教えて過ごすことを夢見たヴィトゲンシュタインだが、実際の教師生活は思いどおりにならなかった。生徒との距離感がうまくつかめなかったのだ。彼の授業のスタイルは、体罰も当然の古い授業スタイルであった。そのため、結局は体罰問題が表面化し、教師を辞める羽目になる。

 

 学校の外では、子供にも村人にも無関心だった。生徒に道で出会って挨拶されても、知らん顔。そのくせ生徒には挨拶を強要した。挨拶しなかったら、ビンタをくらわせていた。(…)

 えこひいきも激しかった。エンゲルベルトとかビンダーとかレオポールトなど勉強のできる数人には、ギムナジウムに進学させるために、無料で特別に補修していた。お菓子やパンをほうびにして。(…)

 一〇時に終わる授業が一一時や一二時まで延びることもあった。生徒にとっては学校なんて、仕方なしに通う場所だから、とても迷惑だった。

 ヴィトゲンシュタインは勘定をコントロールするのが苦手だった。すぐ興奮して、汗をかき、鼻を鳴らし、ハンカチをギーッと噛んだかと思えば、自分の眉のうえに跡が残るほど強く爪を押しつける。そういう自虐は、まだご愛嬌だった。

 アンナ・ブレナ〜は、むずかしい宿題がよくできていたので、黒板で計算問題を解くように言われた。けれどもアンナが解けなくてまごまごしていると、たちまち平手打ちが飛んできた。(解説)

 

ヴィトゲンシュタインの小学校教師への転身は、居場所を求めてだったが、居場所を見つけることができなかった。そんなヴィトゲンシュタインのふるまいを、精神科医の福本修は発達障害の一種であるアスペルガーの視点からとらえようとする。

 

 ヴィトゲンシュタインはアスペルガー者で、「心の理論(theory of mind)」がなかった。相手の意図を理解したり、相手の視点を共有したりすることがなく、自分の心の状態を相手に伝えることをしない。ふるまい(事象の状態)と心理(心の状態)の関係が予測できない。自分の視点を他人の視点に転換できないので、相手の立場に立って意味を理解すrことができない。

 正しい行為に極度の関心をもつのはアスペルガー者の特徴である。ヴィトゲンシュタインは、その時々の「倫理的意思」で動いているが、戦場では他の兵士たちにうんざりし、学校では生徒にうんざりする。兵士になる・教師になるという外的な出来事にこだわったけれど、自分がやろうとしていることの実際を知らず、現場で柔軟に適応・対応できなかった。(「解説」)

 

だからと言って、ヴィトゲンシュタインの小学校教師時代(1919-1926)を、不毛な「失われt七年間」ととらえるのは誤りだろう。生徒とのコミュニケーション不全に悩むことで、ヴィトゲンシュタインは、『論理哲学論考』で試みたすべすべした理想的な言語の世界に決別し、現実の言語の世界に着地しようと試みる。

 

 ヴィトゲンシュタインは前期『論考』の夢を捨て、矛盾を許さない論理言語の土俵から降りて、「ざらざらした地面」に戻り、つまり、私たちの言語活動(日常言語)を相手に哲学を再開して、後期『哲学探究』を展開することになる。

(「解説」)

 

この七年間がなければ、『哲学探究』も生まれなかったかもしれない。解説は次のように結んでいる。

 

『論考』のアスペクトから『探求』のアスペクトへの転換。二ーダーエースターライヒ時代は、あいかわらず苦しみ悩みながらも、実り豊かな七年だったのではないか。『小学生のための正書法辞典』は、そんなヴィトゲンシュタインのアスペク転換を予告する、ささやかな記念碑である。(「解説」)

 

PS さて、肝心の辞典の本文であるが、一種のドイツ語小辞典となっている。これは、ウィトゲンシュタインの研究者やファン、ドイツ語学習者以外、意味不明の内容かというとそうではない。収録されている約3千の単語のうち、2割から3割程度の語は、大学入学程度の英語力がある人なら、見ると意味がわかってしまうのである。

 

たとえば、Cで始まる単語はドイツ語では非常に少ないが、そのすべての見出し語を順に拾うと次のようになる(派生語や同意語は割愛し、簡略化したもの)。

 

  Celicius (摂氏)

der Character (性格)

der Chauffeur (運転手)

die Chemie (化学)

   China  (中国人)

die Cholera (コレラ)

der Chor (合唱団)

das Chor ([教会の]内陣)

der Choral (聖歌)

der Christ (キリスト教徒)

   Christoph(クリストフ)

   Chrisutus (キリスト)

das Coupé (コンパートメント)

der Coupon (クーポン券)

der Cousin (男のいとこ)

 

これだけである。スペルを見て、意味がわからない単語の方が少ないのではないだろうか。

 

小学生向けということで、基本的な単語中心に拾い、人名などの固有名詞も収録されているため、英語や知っている外来語が非常に多いことに気がつく。Ä ä(アーウムラウト) Ü ü (ウーウムラウト)Ö ö(オーウムラウト)ß  (エスジェット)といったドイツ語の固有の読み方に関しては、個人で学ぶしかないが、単語と意味の対に関して言えば、ドイツ語を学んだことがない人でも、数百から千程度の単語を確認し、暗記することも可能だろう。

 

そして、使えば使うほどに、さまざまな工夫が目に入り、とても覚えやすく編集されていることに気づく。たとえば、「終わり」を意味するEndeという単語の周辺はつぎのようにまとめられている。

 

das   Ende[終わり]、Zu Ende [終わりに]、enden [終わる]、endigen[終わる]

   endlich  [ようやく]

   endlos  [終わりのない]

 

ある意味、私たちは天才ヴィトゲンシュタインの整理された頭の中を覗いているかのような感覚である。訳者の和訳が付されているために、『小学生のための正書法辞典』の邦訳は、日本人にも使える独和小辞典にもなっているのである。

 

*このレビューは、Kindle版に基づいています。

  Kindle版

國分功一郎「100分de名著 スピノザ 『エチカ』」

 文中敬称略

 

 

「100分で名著 スピノザ 『エチカ』」(NHK出版)は、NHK(Eテレ)のテレビ番組「100分で名著」のテキストですが、「哲子の部屋」の単行本のような対話の収録形式ではなく、講師である國分功一郎の書き下ろしのかたちをとった哲学書となっています。

 

放送を見る、見ないにかかわらず、単独で読み、スピノザの主著である『エチカ』とスピノザの生涯を理解できる構成となっているのです。

 

哲学を一般向けにわかりやすく解説する場合、実は語りやすい哲学者とそうでない哲学者があります。

 

たとえばニーチェやサルトルなど実存主義の哲学は、人生論的に理解できるので、理解しやすい哲学でしょう。

プラトンも、対話の中で、具体例をたっぷりに、真や美など基本的な価値について議論しているわかりやすい哲学に入るでしょう。

ルソーのような社会哲学も、教育にせよ、土地所有の話にせよ、具体的な場面が思い浮かぶ中で賛否が争われる、わかりやすい哲学です。

 

その中で、わかりにくい、あるいは説明しにくい哲学者の一人として、スピノザがあげられます。

 

同時代のデカルトが、ゴギト・エルゴ・スム(われ思うゆえにわれあり)というとても記憶しやすい物語とともに紹介され、わかりやすい哲学の一人とされているのに対し、スピノザは、難解な哲学と扱われがちです。

 

スピノザの哲学は、デカルトと同じいくつもの言葉を使っていても、まったく異なった用法で、用いているのです。

 

 スピノザは近代哲学の成果を十分に吸収しつつも、その後近代が向かっていった別の方向を向きながら思索していたからです。やや象徴的に、スピノザの哲学は、「ありえたかもしれない、もうひとつの近代」を示す哲学であると言うことができます。

 そのようにとらえる時、スピノザを読むことは、いま私たちが当たり前だと思っている物事や考え方が、決して当たり前ではないこと、別のあり方や考え方も充分にありうることを知る大きなきっかけとなるはずです。

p6

 

デカルトの主体の概念は、「近代」の基礎となった概念ですが、スピノザは意志に行動が従属するようなものとして、主体を考えませんでした。力の有無によって、能動と受動がわかれるような場として主体を考えたのです。また、神についても、スピノザが抱いたのは、わたしたち人間を含めて、世界全体に遍在するシステムとしての神の概念でした。

 

デカルトと互換可能な哲学ではなく、同時代でありながら、一種パラレルワールドをかたちづくっていたのがスピノザの哲学なのです。

 

それを國分功一郎は、OSの違いにたとえます。

 

ーーーたくさんの哲学者がいて、たくさんの哲学がある。それらをそれぞれ、スマホやパソコンのアプリ(アプリケーション)として考えることができる。ある哲学を勉強して理解すれば、すなわち、そのアプリにあなたたちの頭の中に入れれば、それが動いていろいろなことを教えてくれる。ところが、スピノザ哲学の場合はうまくそうならない。なぜかというと、スピノザの場合、OS(オペレーション・システム)が違うからだ。頭の中でスピノザ哲学を茶道させるためには、思考のOS自体を入れ替えなければならない…。

「ありえたかもしれない、もう一つの近代」と言う時、私が思い描いているのは、このようなアプリの違いではない、OSの違いです。スピノザを理解するには、考えを変えるのではなくて、考え方を変える必要があるのです。p7

 

もっとわかりやすく言いかえるなら、デカルト哲学がWindowsであるとすれば、スピノザはThink differentを可能にするAppleのOSです。

 

スピノザは、一切の欺瞞なく、透徹した知性によって、人間の内と外、宇宙を、自然を、世界を、一つの原理によって説明しようとした天才でした。その神の概念を、自然や宇宙に置き換えてみれば、今日でも何の違和感をなく、自分の内外の出来事を説明できるように書かれています。その先進性ゆえに、彼は教会から破門され、テロリストによって襲撃されたり、死後出版された著書も禁書になったりとさまざまな迫害を受けてきたのでした。

 

このテキストの中で、國分功一郎は、善悪、本質、自由、真理の四つの基本概念を説明することで、スピノザの哲学の概要を紹介してゆきます。ベント―(ポルトガル語)・バールーフ(ヘブライ語)・ベネディクトゥス(ラテン語)という三つのファーストネームのそれぞれの中に、スピノザの人生の異なる面を見出すつかみも最高です。

 

スピノザを読んだことのない人は、その世界の新鮮さに驚くはずです。そして、すでにスピノザの著書に接したことがある人は、長年の疑問が解消したり、半分わかったように思っていた概念の誤解に気がついたりすることでしょう。そして、それまでばらばらだった知識が、一つのまとまった絵となって浮かび上がってくるのを感じるはずです。

 

「100分 de 名著 スピノザ エチカ」は、(著者の近著『中動態の世界』の成果まで踏まえた)現代的な視点で、中学生にもわかる平易な言葉で、スピノザの哲学の核心部分を100ページほどでわかりやすく語った小さな名著なのです。

 

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関連ページ:

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